IS-AMU Log.

12月17日、koryさんこと小西さんが伊東港に上陸したことをブログで知った。

このペースだと、故郷の茅ヶ崎にゴールするのは、月曜日か火曜日。
一度だけでも、"旅の途中" の小西さんに会いたいと思い、自宅を5時20分に出て伊東に向かった。

伊東港には、7時20分に到着。
漁港の中を探してみたが、赤いカヤックが見当たらない。
漁師さんや、ダイビングサービスの人に聞いてみても、カヤックは見ていないと言う。

ありゃりゃ、どこに上陸したんだろ？
135号線を少し戻って砂浜が広がっている辺りで車を停め、ぐるっと見渡してみると…いた〜〜っ。

出艇準備中の小西さんに、声をかける。
「こんにちは、千葉です。」
「あ〜千葉さん、あと10分で出ちゃうところでしたよ。」
小西さんとは、何度かメールのやり取りをしていた。

会えてよかった。

「これ、koryさんの好きなバナナと唐揚げです。もしよかったら持ってってください。バナナは1本食べちゃいましたけど。」
「はい、いただきます。僕も1本食べちゃお。」

日本を一周してきたカヤックにも会えて、嬉しい。

カヤックは、一度だけラダーペダルが取れたことがあるだけで、ほぼノートラブルだったとのこと。
持てる全ての機能を発揮し、日本を一周させてもらったんだから、このカヤックも満足しているだろう。

小西さんの脇で出発を待っている、この赤いカヤックが、なんだか命があるように見えてきた。

デッキバッグの上にセットされた、ガーミンのGPSの表示を見せてもらった。
1万キロを優に超えている。
でも、バッテリーのトラブルで15キロほど損をしているらしい。

あまり話してジャマしても悪いので、準備を進めてもらう。

出艇直前にデッキの上にセットされたマップケースは大型のものが3枚。
"ちゃんとした海図" が入っていた。
地図代だけでも大変なものだろう。

そして、ずっと使い続けて、もう水を吸わなくなったボロボロのスポンジは、コクピットの後ろのエクストラハッチの中に大切そうに入っていた。

この大荷物をカヤックに積み込み、出艇の準備をするのもあと数回。
きっと感慨深いものがあるに違いない。

この重いカヤックをどうやって水際まで運ぶんだろうと思っていたら、スターンを少し待ち上げ、ザザザ〜っと押していってしまった。

リアデッキにくくりつけた巨大な防水バッグが、旅するカヤックの証。
カヤックのデザインなのか、荷物の重さなのか喫水線が、コクピットの間際だ。

高々と手を挙げて、koryさんの620日目の航海が始まった。
後には、バウを引きずった1本の線が残っている。

「茅ヶ崎までは、あと2日で行けないこともないけど、そうすると到着が夕方になってしまいそうなので、今日は真鶴までにして、あと3日で漕ごうと思ってます。」

真鶴半島の三ツ石を見下ろせる場所で、日向ぼっこをしながら到着を待っていると、大海原の中に小さなカヤックが現れた。

三ツ石手前の磯場を慎重に通り抜け、一度カヤックを停止させた後で、再び漕ぎ出した。
きっと小西さんの視界には、1年8ヶ月ぶりに見る茅ヶ崎の海岸が入ったのだろう。

今日は、海況がいいので、小田原の辺りまで行くようだ。

無事早川港に漕ぎ着いた。

そして、体を冷やさないように、すぐに着替えを済ませた。
「自然はどうにもできないですけど、自分の体は自分次第なので、体調管理には気をつかいました。なので、一度も風を引いてないんですよ。」

港の人に事情を説明しに行ったあとは、コックピットに溜まった水をかき出し、リアデッキにブランケットを被せて今日のパドリングはおしまい。
早川港は、ボートなどの利用を禁止しているが、日本一周中のカヤッカーを追い出したりはしないだろう。

予定では、621日目がゴールになる。
1年8ヶ月の間 "潮風" を浴び続けた小西さん。
2度目の旅の暗示なのか、後ろの船の名前は「第2しおかぜ」だ。


初めて会った小西さんは、穏やかな人柄でとても感じが良かった。
そして、全てを自分で判断して、旅を進めていく一挙一動に「旅力」を感じた。
「旅力」には、目標を実行する力強さはもちろん必要だが、なによりも人間性が必要だと思う。
旅では、行く先々で様々な人達との出会いがある。
そんな人達と自然体でふれあい、スムーズに旅を進める「旅力」を持つ小西さんは、120%尊敬してしまう。


P.S.
穏やかな小西さんだが、こんな死闘を乗り越えてきた。
「いいから黙って漕げ！」
http://ameblo.jp/kory-seakayak/entry-10768352590.html