気合いの中央アルプス 〜木曽駒ヶ岳〜

祈っていた心配事の1つだった女子2号は、無事回復している。
聞くところによると、薬の時間を計算しながら、毎日酒を飲んでいた…という事らしいので、病気への対処は人それぞれである。
そして、もう1つの心配事である登山当日の天気は、曇りのち晴れで登山指数「A」である。
しかし、全く祈りの対象になっていなかった事態が私の身に降りかかっていた。
10月3日 火曜日、出発の前日にも関わらず、私は38度オーバーの熱を出していた。
その日は家で寝ていようかと思ったものの、そんな事をすれば我が家の主人は「そんな状態で明日から山に行けるわけないでしょ〜!!」と言うに決まっている。
ここは体調不良を悟られないようにするため、いつもと同じように会社に行かなければならない。
会社では、薬を飲みながら一日中ソファで寝ていた。
そして、時間がきたらいつもと同じような顔で家に帰り、普通にご飯を食べて「今日は早めに寝よっ」などと普通に会話をして20時に布団に入った。
残された時間は、明日の出発時間までの17時間しかない。
一緒に行く女性陣にも、この事態の事は言っていないが、「念のため運転免許は持ってきてねぇ」とだけ連絡した。

10月4日 水曜日、「秋のリハビリ木曽駒ヶ岳遠征」の1日目は前泊地の伊那市に移動。
朝の体調は、昨日よりもいい感じがする。
しかし、健康のバロメーターである「お酒が飲みたい指数」は「C」である。
幸い、熱はだいぶ下がっている感じなので、予定通りに家を出発。
女性陣をピックアップした後、ガラ空きの中央高速を伊那に向かって車を走らせた。

途中のコンビニで部屋飲み用のお酒を買い出し。
ビールと、日本酒4合瓶1本を持ってレジに並ぼうとしたら、すかさず女子2号の検閲が入った。
「そんなんで足りるわけないじゃないっ!!」
日本酒4合瓶を1本追加。
ちなみに、当然夕食の時も日本酒は注文する。
宿に到着し、夕食の時間になってもあまり食欲がない。
いつもは出された料理は全て食べるのに、少し残してしまった。
しかし、部屋飲みを開始すると、徐々に体調が復活。
結局、予備で持ってきたウィスキーも開けて、0時過ぎまで飲んでしまった。

PA050002.jpg登山当日、起きるとなんだか体調がいい。
これなら大丈夫そうだ!!
菅の台バスセンターの駐車場に車を停め、6時45分の駒ヶ岳ロープウェイ行きのバスに乗った。
平日なので乗客は少ない。
30分で駒ヶ岳ロープウェイしらび平駅に到着すると、すぐにロープウェイに乗ることができた。
ロープウェイが動き出すのは8時だと思っていたが、この時期は臨時運転をしているようだ。

千畳敷駅に着きテラスに出ると、さすがに寒い。
ザックから追加のウェアを出して、出発の準備をした。
今日のルートはこう。
千畳敷駅2612m〜(50分)〜乗越浄土2850m〜(20分)〜中岳2925m〜(40分)〜駒ヶ岳2956m〜(60分)〜濃ヶ池分岐2670m〜(10分)〜濃ヶ池2655m〜(35分)〜駒飼ノ池2710m〜(30分)〜乗越浄土2850m〜(30分)〜千畳敷駅2612m
累積標高は600mないので、普通の体調であれば楽勝なはずだ。

千畳敷カール写真で見る千畳敷カールは、もっと広大に思えたけど実際はこじんまりして見える。
ロープウェイ内で流れていたアナウンスによると、紅葉はすでに見頃を終えているらしい。

千畳敷カール 乗越浄土乗越浄土 宝剣岳急勾配の斜面を登って乗越浄土(のっこしじょうど)に到着。
全く疲れないので、体調は完全に復活しているような感じがする。体調不良時に出やすい高山病の症状も出ていない。
南側に見える峰は宝剣岳。
数名のパーティが登って行くのが見える。

木曽駒ヶ岳 中岳木曽駒ヶ岳 中岳木曽駒ヶ岳 中岳中岳に到着。
伊那前岳越しに見える山並みの先に富士山が頭を出している。(写真中)
木曽駒ヶ岳へ続く道は、一旦下って登り返すもののとっても楽そうだ。(写真下)

木曽駒ヶ岳木曽駒ヶ岳 頂上木曽小屋木曽駒ヶ岳山頂に到着。
山頂は広く、多くの人がザックを下ろして休憩している。
眼下に頂上木曽小屋が見える。
木曽前岳の向こうに見えるのは、2014年の秋に爆発的な噴火をした御嶽山だ。
頂上木曽小屋の隣には、広いテント場があり標高2870mの場所でキャンプをすることができる。
なかなかそんな場所で寝起きできることはないので、是非とも次回はテントを担いで来てみたい。
ちなみに、槍ヶ岳山荘のテント場は3000mを少し超えた場所にある。

木曽駒ヶ岳 馬の背木曽駒ヶ岳山頂からは、馬の背へのルートを取り、濃ヶ池(のうがいけ)へ向かって歩いて行く。
大きな岩が転がっている場所もあるけど、全く危ないところはない。
人も少なく、快適な稜線歩きだ。

木曽駒ヶ岳 馬の背木曽駒ヶ岳 馬の背ただの水たまりのように見える濃ヶ池への分岐が近づくと青空が出て気温が上がって来た。
少し広い所があったので昼飯にする。
私のメニューは海でも定番なトムヤムクンヌードルとおにぎり。
女子1号が持って来た昼飯は、たったの3分で出来上がるモンベルの新商品だった。
アルファ米だとお湯を注いで15分待たないといけないけど、これはフリーズドライなのであっという間に出来上がり。
なんと水でも5分で食べられるらしい。
今度試してみたい。

濃ヶ池 分岐濃ヶ池への分岐までは思ったよりも時間がかかった。
できれば濃ヶ池へは向かわず、このままずっと稜線を歩いて行きたい衝動にかられる。

濃ヶ池ハイマツの緑と黄金色のダケカンバ、真っ赤に紅葉したナナカマドを見たかったけど、紅葉具合はイマイチ。
時期がずれてた?
それとも、どこも紅葉の質が落ちてる?最近は涸沢の紅葉もイマイチと聞く。

濃ヶ池濃ヶ池水たまりに見えた濃ヶ池に到着。
不思議と居心地がいい。
この池が枯れることなくずっとここにあるという事が信じられない。

PA050099.jpg濃ヶ池から駒飼ノ池(こまかいのいけ)に向かう。
途中、何ヶ所かハシゴがあるものの、たいした登りもなく道はほとんど平ら。
しかし、ここで病み上がりの私に異変が発生。
なぜか息が切れて女性陣のペースについていけず、休憩しながら歩いて行く。
けっして、すぐ後ろを歩いていた美人の2人組みを待っていたわけではない。
駒飼ノ池はどこにあるのかわからなかった。

乗越浄土そして乗越浄土への最後の登り。
きつい登りではないのに、私のペースは上がらず休憩の回数が増えている。
見上げると先を行く女性陣が「何やってんの?」って感じでこっちを見ている。
頭の上で輪っかを作り大丈夫サインを送ると、さっと踵を返して歩き始めた。
ふむ…やっぱり心配して見てたわけじゃないようだ。

千畳敷カールやっとこ着いた乗越浄土から千畳敷駅まではひたすら下る。
何度も足を止めて写真を撮る。
膝も痛くならず、素晴らしく気分がいい。

千畳敷カール 彩雲無事、千畳敷駅に下山し、女性陣はビール、帰りの運転がある私はノンアルコールビールで乾杯した。
陽は見る間に西の空に移動し、テラスの辺りも陽が当たらなくなった。
そして、最後のご褒美にほんの数分だけ彩雲が現れた。

それにしても、2日前には38度の熱で唸っていたのに…。
わ・た・く・し、気合いで頑張りました!!