幸せの条件

幸せの条件 日曜日の午前中、所用の為、多摩に向かって車を走らせていた。
予定よりも早く着きそうだったので、コンビニに寄ってコーヒーを飲むことにした。
ちなみに、2013年にヒットしたコンビニコーヒー比較は、セブンイレブンがベスト。
ファミマもローソンも値段と量のバランスがあまり良くない。


店の前では、一匹の犬を連れたおじさんがストローでアイスコーヒーを飲んでいた。
自分もコーヒーを買って、隣りの白いイスに腰掛ける。
二人の間にいる犬は逃げない。

おじさんは70歳。
犬は9歳だという。
犬の飼い主はおじさんで三人目。
二人目はおじさんの友達だったけど、家の都合で飼うことができなくなったらしい。

「昔、耳の病気にかかって手術して、八日間入院した事があるのよ〜。それで右の耳が下に垂れている。」
「でも、それも可愛いですよね。」

背中には傷跡があり、毛が生えていない所があった。
その傷は、最初の飼い主の虐待の痕らしい。

「初めての人は避けるんだけど珍しいね。」
「よかったあ、嫌われなくて。」


犬は、頭の良さそうな顔をしている。

おじさんは、大工の仕事をしていた時、左足の上に部材を落としてしまい、怪我をした。
そして、それをきっかけに仕事から引退した。
おじさんの今の収入は、年金だけだ。

「贅沢はできないけど、犬の餌代なんてたいした事ないよ〜。冬の夜、布団に入るとこうやって潜り込んでくるわけさ。」

前歯が欠けた顔でニッコリ笑いながら話す。


幸せの条件って何だろう。
お金があっても幸せそうに見えない人がいる。
仕事があっても幸せそうに見えない人もいる。
平気で嘘をついたり分別の無い大人がいるかと思えば、つまらなそうな顔で文句ばかり言っている若者がいる。


一匹の犬と暮らすそのおじさんは、とても幸せそうに見える。
犬は裏切らない。
そしてこのおじさんも犬を裏切ることはない。
一緒にいるだけで心を穏やかにさせてくれる相棒がいる。
それが一番幸せなのかもしれないなあ…
爽やかな青空が広がる日曜日のコンビニで、ふとそんな事を思った。