この世界の片隅に

やっと観ることができた。
この映画は上映館が少なくて、いつもは行かない川崎の映画館まで足を運んで観た。
アニメだけど、子供の姿はない。

こうの史代(こうのふみよ)さん原作の物語は、主人公すずさんを中心に淡々と進んでいく。
少しぼ〜っとしたすずさんは、大げさに自己主張することもなく、いろんな事を自然体で受け入れながら日々の暮らしを楽しんでいる。
もちろん"反戦映画"なのだけど、映画のメッセージとしては"反戦"だけを伝えようとしているのでは無い。
監督の片渕須直(かたぶちすなお)さんは、この映画を"暮らしの映画"と言っていた。
国家という枠組みの中では、なぜか愚かな政治家が選ばれ、愚かな者が権力を持ち、間違った方向に国の舵をきることがままある。
それは、ある日突然違った方向に進む訳ではなく、小さな間違いの積み重ねのすえ、気がついた時には元に戻れないくらい後戻りしていたり、荒波の方向に進んでしまっているように思う。
70年前の世界には、テレビもインターネットもなく、あるのはラジオと新聞だけ。
普通に暮らす人達が世界で何が起こっているかを知るには、それしか手立てはなかった。
そんな中、70年前のラジオと新聞はウソを並べていた。そして2017年の日本でもテレビと新聞はウソを並べている。
それでも、この世界の片隅に生活する我々は日々を懸命に生きている。
食べて、寝て、仕事をして…何か楽しい事を見つけながら。

「この世界の片隅に」は、全ての日本人だけで無く、世界中の全ての人達に観てもらいたい映画だと思った。