風と鳥の島 礼文島4日目〜旅を終えて〜

路線バスで香深に戻り、宿に荷物を置いた時はすでに19時半になっていた。

宿に夕食は付いていないので、どこかの店で食べることになるが、宿から紹介してもらった地元料理の店はラストオーダーが21時らしい。
しかたがないのでシャワーを浴びずに塩気のある体のまま店に向かった。

入ったのは港の真ん前にある「海鮮処 かふか」。
礼文島名物料理の「ホッケちゃんちゃん焼き」が食べたかったので、炉端の部屋に案内してもらう。

知らない場所で店に入った時は、下手にメニューから選ばないで "お任せ" にするのが正解。

「ホッケちゃんちゃん焼きは食べたいです。それ以外はお任せでお願いします。」
「地元の食材を使ったものでいいですか?」
「はい、それで!」

出てきた料理はどれも絶品。
ビールジョッキはアッと言う間に空になり、熱燗に移行。
炉端スタイルなので、目の前の網の上にカラカラを乗せてくれる。

他の席に座っていた人達とも和気あいあいになり、話しが弾んだ。
なんと!
自分の隣で黙々と料理をつまみ、酒を飲んでいたのは今日ヨットで礼文島に着いた人だった。
旅に出てから60日!

「この店を出たら、僕の船で飲み直しませんか?」
「いいんですか?はい、喜んで!」

店を出て港の桟橋を回り込み、係留してあるヨットのキャビンにお邪魔した。

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この方は小城さんと言って、年齢が67才。
2ヶ月前に和歌山を出航し、瀬戸内海を通って関門海峡を抜け日本海を北上、津軽海峡を横断して北海道に渡り、時計回りに航海して礼文島に着いた。
すごい人だ!

「お酒は何がいいですか?何でもありますよ。泡盛はどお?」
「はい、泡盛がいいです。」

宿のお風呂は23時までなのに、気がついたら23時を過ぎるまで話しをしていた。

「よかったら明日の朝もどおぞ。コーヒーでも入れますよ。」
「はい。フェリーに乗る前にお邪魔します。」

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翌朝。
朝飯の前にヨットにお邪魔した。
ちょうどイカ釣り漁船が優雅な船体を滑らせながら港に入ってきた。

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コックピットの小さなテーブルを挟んで話しをした。
飲み物はコーヒーではなく白ワイン。

私「なぜ帰りも日本海側なんですか?」
小「太平洋側の港は、町から離れていたりしてるけど、日本海側は歴史的に町の中に港があるし、食べ物も美味いからね。」

私「こうやって、外で食べたり飲んだりできるのは最高の幸せですね。」
小「そう。それが最高の贅沢だと思う。」

小「どこの町も余計なお金を使って無駄な箱ものを作り、貴重な文化を伝えなくなってきているよ。」
私「いくら綺麗な建物を作っても、そんな物では人は呼べないし、大切なのは人や文化なんですけどねえ。」


楽しい時間は早く過ぎる。
宿に戻り、美味しい朝飯を食べたら、もうフェリーの時間になった。
5分でお土産を買い、フェリーに乗り込んだ。

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礼文島は遠ざかる。
来た時と同じ様に、半分雲の中に隠れている。
なんだか、さっきまであの島にいたことが夢のように感じる。

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利尻富士は最後まで顔を見せてくれなかった。

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帰りの海はどこまでも凪いでいた。
ところどころに潮目がある。
小城さんが利尻島を越えて礼文島に渡る時は、はっきりとわかる海流があったらしい。