風を見た日 〜葉山周辺〜

12月1日 土曜日。
11月30日から1日経っただけなのに、気分はずいぶん違う。

今日の天気は晴れ。
葉山大浜の風予報を見ると、午前中は2〜3メートルの数字が並んでいるが、15時頃から急激に北風が上がってくるらしい。
そして、もっと詳細な予報を見ると、昼頃一時的に雨が降る。
今日の昼飯は自炊の予定なので昼に雨が降られると困るが、それよりも注意しないといけないのは「風」だ。

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8ヶ月ぶりに葉山公園の駐車場に入った。500円。
あれ?12月は無料じゃなかったっけ?
葉山公園や他のWebサイトを見ても、12/1〜3/31までは無料になっているけど…。
通年有料に変わりましたかね?

暑い時期には来ないので、私が知っている葉山公園の混み具合はだいたいこんな感じ。
まあ〜ガラ空きってことなので、駐車スペースをもう一つお借りしてウィスパーを組み立てる。

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ウィスパーのバウ側(前側)。
このフットブレイスは、踏ん張りやすくて、とてもイイ。
最近はあまり浸水しないが、時々アレっ!ていうくらい沢山の水が入っていることがある。
本来は、まったく浸水しないのが正しい状態なので、天気のいい日にじっくりハル(底)のメンテナンスをしようと思う。

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階段を降りて、カヤックを準備した。
なんだか穏やかで、一瞬江ノ島まで行っちゃおうかな〜…って気分になったが、風は必ず上げてくる!
今の状態だけで判断すると、こっぴどい目にあうので注意。
自粛後に決めたルートは、まず南下して立石に行き、そのままUターン。長者ヶ崎の裏を見てから森戸方面に向かい、風が上がらないうちに大浜に帰還する。

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大浜を出艇し、長者ヶ崎に向かう。
すでに予報とは違う風が吹いている。
パドルが巻き上げた飛沫が北東の風で飛ばされ、頭の上とデッキに降り掛かかる。
今日はデジカメを忘れてしまったので、写真は全てiPhoneで撮影。
南へ向かって撮るこの時期の写真は、まるで夕暮れのようだ。

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立石に到着。
京浜急行のポスターになったこともあるこの場所は、富士山を入れて撮ると日本的でとても美しい。
そして、この場所を美しいと感じるのは "昔の人" も同じだったようで、安藤広重が浮世絵を書いている。
カヤック目線ではちょっと低すぎる。
安藤広重と同じ様に、少し高い目線で全体を見た方が美しいかもしれない。

[参考サイト]
秋谷海岸からの富士
 ※リンク許可ありがとうございました。

今日は残念ながら富士山は見えない。

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いつものように立石の裏側へ上陸し、いつものように日影にカヤックを置く。
特に何かがあるわけでもなく、特に何かをするわけでもない。
少しだけ休憩して出発。

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ところどころで風が駆け抜けていく。
海の上にいると、風は目に見える。
この後本当の "風" を目にすることになるとは…この時点では、これっぽっちも思っていなかった。

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久留和。
人工物のある海岸線はあまり好きじゃない。
でも、晴れている時の久留和は、134号線に沿ってある町並みが輝いているのでけっこう好き。

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長者ヶ崎の裏を通って、"付け根" の辺りに上陸した。
長者ヶ崎の裏は、相変わらず水の色が違う。海底の違いではなく水の色そのものが違っている。
今日は色の違いが崖近くだけだったが、日によっては数十メートル沖まで違っている。
何かの岩石が溶けてこんな色になっているのだろうか?
まるで、雪解け水が流れ込んでいる春の奥利根湖の様な色だ。

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スニッカーズを食べながら "付け根" で休憩していると、男2女2のパーティが大浜側からやって来た。
上陸するのかと思ったら、カヤックを2メートル移動させて、そのまま久留和側へ漕ぎ出して行った。
「ショートカットですか?」
「はい!! そおで〜す」
何故かみんな裸足。元気だ!

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森戸に向かう途中にある芝崎の岩礁地帯。
正面には江ノ島が霞んでいる。くっきり見える時は手を伸ばせば届くような距離に見えるが、今日は遥か彼方だ。

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岩礁帯を回り込み、バウを森戸に向けると海面が真っ白になっていた。
鳥だ!
辺りには誰もいない。自分だけ。
パドルから音をさせないさせないように、そっと近づいて行く。
こっちに気がついた一羽が飛び立つと、まるでドミノ倒しのように全ての鳥が舞い上がり、一瞬にして海面から消えてしまった。

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森戸海岸から材木座の方向を見る。
大気の様子が少し違って感じる。

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森戸神社下へ上陸すると同時に雨が降ってきた。
予報どおりだ。
一瞬自炊を諦め、後楽でカキフライでも食べようかと思ったが、すぐに止みそうな感じがしたので待つ事にした。

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その7分後には青空が広がった。
どうも変だ。

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ランチは、ベーコン入りのガーリックライスにした。
ライスだけだと寂しい感じもしたが、長者ヶ崎でかじったスニッカーズが効いているようで、十分満腹になった。

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さて食後のコーヒーでも…とお湯を沸かし始めた時、世界の色が変わった。
黒い雲が上空を被い、西の空が明るくなった。そして、風が止み、音が無くなった。

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その5分後、猛烈な北北東の風が辺り一面に吹き始めた!
逗子湾から材木座方面は、海上が真っ白になり、手漕ぎのボートは一瞬で大荒れとなった海上で身動きが取れなくなっている。
森戸海岸にいたカヤック4艇の内、2艇が逗子方面に戻ろうとしているが、1艇は諦めて風が吹き付ける西側の浜に上陸し、陸路でカヤックを回収している。
そして残りの2艇は迎えに来たエンジン付きのゴムボートに曳航されて行った。
手漕ぎボートの救出に大型の釣り船が向かうと、またたく間に全てのボートをロープで結び、曳航している。
"風" 見え過ぎ!

IMG_6356.jpg辺りは真っ暗になり、神がかった光が天空から差し込んでいる。
この様な光の筋を「天使の梯子」と言うらしいが、天使ではなく、悪魔が舞い降りてくる様な雰囲気だ。
すごい!

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風を遮ってくれる神社下の防波堤に寄りかかって風が収まるのを待っていると、真っ黒な海から3艇のカヤックが現れ、こちらに向かってきた。
上陸した3人に話しを聞くと、長者の方へ戻ろうとしていたが、このまま進むと危ないと判断し、ここへ避難してきたらしい。
4人で待つ。

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風は峠を越えた。
3艇のカヤックに続き、自分も森戸の浜を後にした。
風波の芝崎を抜け一色海岸側に出ると、そこには別の海があった。

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