ヒーローを讃えない国

ニュースキャスターの辛坊さんが、ヨットで事故に遭い海上自衛隊に救助された。

不慮の事故で冒険は失敗したけど、ヨットから脱出するまでの判断や行動は迅速で的確、そして救命ボートに乗り移る直前に海面から高さ5メートルの所に設置されていた定点観測カメラの映像が記録されたSDカードを取り出す冷静さもあった。
その10時間後、海上自衛隊が素晴らしい活躍で漂流していた二人を救出した。

このニュースを知った時、救出された辛坊さんと盲目のヨット乗り岩本さんもヒーローだし、二人の救出に尽力した人達と海上自衛隊の人達もヒーローだと思った。


ところが、世間の目は違った。
特に今日行われた中山泰秀部会長を中心とした自民党国防部会では、辛坊さんの行動を批判する意見が相次いだらしい。
あ〜〜なんて寂しい国なんだろう。

本来なら、二人の失敗を残念に思い、そして一人も怪我をしなかった事を喜ぶべきなのに…。

この国では、人の失敗を非難することしかできない人達が沢山いる。
誰もやらなかった事をやろうとする人を讃えようとしない。

仕事をしている人以外の人が118をコールすると非難されるってこと?
じゃあ119はどうなの?
あ〜〜なんて寂しい国なんだろう。


ヒーローを讃えない国の話しをしていても面白くないので、話題を変えることにする。
辛坊さんが持ち帰った映像を見て驚いた。


本当にクジラとぶつかっている。
これでは小さなヨットなどひとたまりも無い。
衝突から沈没まで10分間。24マイル以内に船など障害物がないことを確認して睡眠を取っていた二人なのに、よくもまあそんな短時間で救命ボートの準備をして脱出できたものだとあらためて驚く。

そして、この事故の状況を知り、二つの話しを思い出した。

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一つ目は、1991年に佐野三治さん達を襲ったヨット事故。

三浦半島の小網代からグアムまで行くヨットレースに参加していた佐野さん達7人は、3日目の夜、辛坊さん達と同じようにクジラに衝突し、27日間漂流することになった。
そして助かったのは、この本のタイトルにもあるようにたった一人。

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もう一つは、たった一人でレースに参加していたスティーヴン・キャラハンを襲った事故。
ヨットがクジラに衝突して沈没し、その後76日間を漂流することになってしまった。


どちらも、生々しい状況がリアルに伝わってくる。

そして、「大西洋漂流76日間」の本のカバーにはこんなことが書いてある。
"遭難者の90%は3日以内に死んでしまう"
海難事故から生還することは、それだけで奇跡だし、生き残った人も救助した人もヒーローなのだ。

(あとがき:2019-8-6)
この記事は海上で予期しない事故に遭遇したにも関わらず、その人達を避難する心無い声に違和感を感じたのでブログにしました。
辛坊さんがテレビに復帰した後の、政権に忖度した発言や人格を肯定するものではありません。