天の川の夜 1日目〜涸沢カール〜

横浜にあるアウトドアショップで1枚のパンフレットに目が止まった。

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紅葉の涸沢カール。
見た事も無い色鮮やかな紅葉と険しい山、そして蒼い空…美し過ぎる。
是非この目で見てみたいと思った。

涸沢へ行くには、上高地から歩いて6時間。とても日帰りでは行けないので、現地で一泊するしかない。
ところが紅葉の時期の混み具合を調べてみたところ、尋常じゃない事がわかった。
出発前のトイレ待ちに1時間、登山道は人で渋滞し、涸沢ヒュッテでは1枚の布団に3人…等々、これは人ごみが嫌いな自分にはとても無理。
"静かな涸沢" を楽しむには、紅葉の時期を外すしかない。

上高地バスターミナルIMG_3350.jpg

9月11日 金曜日、初めて上高地にやって来た。
バス乗り場のある沢渡(さわんど)までは自宅から車で3時間半ほどなので、尾瀬に行くのとたいして変わらない。
沢渡の駐車場(600円/日)に車を置き、30分毎に出ているバスで上高地バスターミナルまで行く。
上高地バスターミナルは、観光客にとっても登山者にとっても、綺麗で洗練された素晴らしい施設で、とっても気分がいい。
登山届けを出すポストの近くには、明日の復路で考えていたパノラマルートが通行できない旨の張り紙がしてあった。

ターミナルにある売店で昼飯とワインを買い出してから出発。
ちなみに、ワインはプラティパスに移し替え、空きビンはお店の人に返した。

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登山道に入る横尾までは、標高差の無いほぼ平な道が続いていて、観光客の方達も歩く。
なかなか気持ちのいい道だけど、できれば2時間くらいで横尾に着けると嬉しいかも。

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梓川(あずさがわ)の河原は思ったよりも広い。
大きな流木が転がっているってことは、こんな所まで川幅が広がることがあるんだろうか?
この日は、台風18号の影響で鬼怒川が欠壊し常総市が水没した後の週末。
日本の真ん中を横切った台風18号がこの地域にどの程度の雨を降らせたかはわからないけど、川の色は美しく水量も増えていないように見える。

横尾大橋

横尾に到着。
横尾大橋から先は登山道になるので、装備の無い人は入れない。

昼飯を食べている時、隣りに韓国人の二人組みがいたので声をかけてみた。
「美味しそうな匂いがしますね。何を食べているんですか?」
と聞くと、尾西のアルファ米の様なパッケージを広げて中身を見せてくれた。
「韓国のラーメンです。」
どこで買えるんだろ?とっても美味しそうに見えた。

屏風岩IMG_3379.jpg

左手に屏風岩を見ながら1時間ほど平坦な道を歩いて、本谷橋(ほんたにばし)に到着。
この後に続く長い登りに備えて、しばし休憩する。
冷たい沢の水で顔を洗うと気持ちがいいけど、この水は飲まない方が無難。

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本谷橋から涸沢までは標高差600メートル。
山の奥深くに入って行く雰囲気の道は気分がいい。
しかし、背中にはテントの入った重いザックがあるので、そんな悠長な事を考えている場合ではない。

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休憩を繰り返しながら高度を稼いでいくと、目の前に涸沢らしい風景が現れ元気が出た。
もう少し!

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涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐から少し登った場所に立ち止まり、歩いてきたルートを見るとこんな感じ。

涸沢カール

涸沢カールに到着!
まずはテント場の受付を済ませてしまう。
紅葉時期ではないので、好きな場所に設営できるけど、広すぎてどこに張ろうかとかえって迷ってしまった。

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寝床が決まったらビール!
おでんと缶ビールをもらって、念願のテラス席で一息ついた。
既に気温も落ちていたので冬仕様のジャケットを羽織っているけど、それでも到着ビールの美味さは格別。

涸沢カール キャンプ場

テラス席からテント場を見るとこんな感じ。
紅葉の時期はテントもいっぱい、そしてテラス席も人で溢れてしまう。

涸沢カール キャンプ場涸沢カール

テントに戻って夕食を済ませ、周囲の山のシルエットを楽しみながら一杯やっていると、一人の男性が近づいてきた。
「すみません。自分のテントがわからなくなってしまったので、何かライトを貸してもらうことはできますか?」
その人は、さっきテラスで横の席にいた人だった。
「さっきテラスでお話されていた方ですよね?テントはグリーンですか?楽しい話しをされていたので、思わず聞き耳を立ててしまいました。」
「あ〜そうでしたか!はいテントはグリーンです。」
ライトを渡してしばらくすると、無事テントを発見できたようで戻ってきた。
「ありがとうございました。よく自分のテントがわからなくなったみたいな話しは聞くんですが、まさか自分がそうなるとは思ってもいませんでした。明日は北穂高に登ってきます。」
思いがけず楽しい会話ができて、こちらこそありがとうございました。

一つまた一つと星が輝き出し、気がつくと天空全体を星が覆い尽くしていた。
今回は忘れずに眼鏡を持ってきたので、天の川がはっきり見える。
風もなく静か…いい夜だ。

(2日目につづく)