右か左か 〜奥利根湖〜
奥利根湖へ続く矢木沢ダム管理道路は、雪崩などの危険があることから冬は閉鎖されている。
5月9日 水曜日、その管理道路が5月11日から開放されることが水資源機構からアナウンスされた。
昨年は身内の問題でバタバタして行く事ができなかったが、今年は突然の用事が入る前にさっさと行ってしまうことにした。
管理道路を通れるのは朝の6時から18時半まで。
少し余裕をみて6時前に矢倉橋ゲートに着いてみたら、ゲートはすでに開いていた。
なんで?
その後、10分ほど山道を走ると奥利根湖に到着する。
駐車場がある矢木沢ダムの少し手前から釣りボートを牽引したり、カートップしている車の列が連なっていた。
一つ前の車のお兄ちゃんに聞いてみた。
「これは何の列なんですか?」
「まだ、ゲートが開いていないので待ってます。」
ゲートというのは、湖に船を降ろす場所の手前にある管理人がいる侵入ゲートのこと。
なるほど...と思って少し並んで待っていたが、考えてみたら自分は車でゲートを通過するわけじゃないので、この列の横を通って、管理事務所の近くに車を駐車した。
車の横でカヤックの準備をしていると、管理事務所の人がやってきた。
奥利根湖では、事前に登山カードの様なものを書いて管理の人に渡し、半券をもらう。
そして、遊び終わって戻って来たらその半券を渡すルールになっている。
ちなみに、数年前からキャンプは禁止されているので、湖の奥で夜を過ごすことはできない。
準備が終わり、7時過ぎにスロープにカヤックを持って来た。
朝7時を過ぎると、ほとんどの釣りボートは湖に出て行ってしまっているので静か。
ここでも、釣り人は元気いっぱいだ!
コンクリートのスロープを蹴って、奥利根湖に浮いた。
湖は、裏磐梯にある小野川湖以来。
奥に見える雪山はイラサワ山だろうか?
奥利根湖の全体像は「Y」の字の形をしている。
初めて浮かんだ自分には、右と左どっちの景色がいいのかわからない。
管理事務所の人に聞くと、即座に「右!」という答えが返ってきたので、右ルートへ行ってみることにする。
雪解け水が流れ込んでいる湖水はこの様な色をしている。
クリーミーで癒される色だ。
鏡の様な湖面。
風でさざ波が立っている場所との境界がはっきりわかる。
あまり雪をかぶっていない山が正面にある。
日陰山か赤倉岳だろうか?
真っ白な雪に覆われているもっと高い山をイメージしていたので、ちょっと違う気がする。
細かい木屑や枝に混じって、この様な流木も浮いている。
湖畔では、桜が咲いている所もあるので、季節感としては横浜よりも1ヶ月半くらい遅い感じだろうか。
初々しい若葉も出始めてはいるが、どちらからと言うとまだ冬の様相。
漕ぎ始めて1時間ちょっと。
上陸して少し休憩することにした。
ダム湖でかつ貯水率が99%以上のためか、なかなか上陸できる所が無いが、沢の流れ込みでこんな場所を見つけた。
沢からは澄んだ雪解け水が流れ、湖岸の白い砂と相まって素晴らしい景観を作っていた。
乳白色の砂は、カヤックから踏み出した足がズブズブと埋まってしまうくらい柔らかく堆積している。
だいぶ渓谷の幅が狭くなってきた。
水の色は所々で色が微妙に違う。
そして、枯れ木の間に直立している針葉樹林が新鮮に見える。
もっと狭い所を進んで行くのかと思っていたら、急に最深部が現れた。
ここから先は水深も浅いし、流れも急なので川をさかのぼって行く事はできない。
出艇場所からここまでは10キロちょっとなので、ノンビリと2時間も漕げば着いてしまう。
利根川の源流は、ここから更に10キロさかのぼった大水上山と言われている。
この場所でキャンプが許されるのであれば、ここにカヤックを置いて、沢の奥まで歩いて行ってみたい。
見える景色が違うので、復路も飽きない。
山から崩れ落ちた雪の固まりが浮いていたりする。
途中、ある沢の入り江で、ボートに乗った年配の男性と会い少し話しをした。
この男性は年に60回もこの湖に来るらしい。
いくら釣りが好きだと言っても、その数は尋常ではない。
1年の半分は雪に閉ざされているので、残り6ヶ月の内2ヶ月はここにいるということになる。
たぶん、奥利根湖は季節毎に表情を変え、この男性を楽しませているんだろう。
「湖から15分ほど行った場所でテントを張っているので、帰りにコーヒーでも飲んでいきなさい。」
とお誘いを受けた。
沢の流れ込み。
キラキラと澄んで、汚れのない水だ。
滝はいたるところにあり、湖に冷たい水を流し込んでいる。
海では、大気中よりも水中の方が温かいが、ここでは逆。
手を入れると、まるで氷水の中に浸けてる様に冷たい。
この季節にカヤックを転覆させたら、5分でハイポサーミアにかかるだろう。
感覚は海と違う。
なんて言ったらいいんだろ…"旅する感覚" とでも言うか、自然から自分の中に何かが流れ込んでくるような感じを受ける。
たぶん川旅というのは、こんな感覚なのかもしれない。
ちょっと、今年あたりやってみようかな。
お腹がすいたので、幅10センチくらいの水しか流れていない枯れた沢に上陸。
雪の上にカヤックを引き上げた。
イス代わりの大きな木に腰掛け、ゆっくりと食事をする。
全ての木は、斜面から真横に幹を伸ばし、グイっと上空に向かって成長している。
生命は力強い。
小さな沢を出発し、"左ルート" の入口から少しだけ中に入ってみた。
こっちの方がいい景色に見える…。
帰り道、例の男性のテントに寄ってみた。
ボートは置いてあったが、残念ながら主は留守だった。
簡単な手紙を書いてテントの中のテーブルに置き、奥利根湖を後にした。
5月9日 水曜日、その管理道路が5月11日から開放されることが水資源機構からアナウンスされた。
昨年は身内の問題でバタバタして行く事ができなかったが、今年は突然の用事が入る前にさっさと行ってしまうことにした。
管理道路を通れるのは朝の6時から18時半まで。
少し余裕をみて6時前に矢倉橋ゲートに着いてみたら、ゲートはすでに開いていた。
なんで?
その後、10分ほど山道を走ると奥利根湖に到着する。
駐車場がある矢木沢ダムの少し手前から釣りボートを牽引したり、カートップしている車の列が連なっていた。
一つ前の車のお兄ちゃんに聞いてみた。
「これは何の列なんですか?」
「まだ、ゲートが開いていないので待ってます。」
ゲートというのは、湖に船を降ろす場所の手前にある管理人がいる侵入ゲートのこと。
なるほど...と思って少し並んで待っていたが、考えてみたら自分は車でゲートを通過するわけじゃないので、この列の横を通って、管理事務所の近くに車を駐車した。
車の横でカヤックの準備をしていると、管理事務所の人がやってきた。
奥利根湖では、事前に登山カードの様なものを書いて管理の人に渡し、半券をもらう。
そして、遊び終わって戻って来たらその半券を渡すルールになっている。
ちなみに、数年前からキャンプは禁止されているので、湖の奥で夜を過ごすことはできない。
準備が終わり、7時過ぎにスロープにカヤックを持って来た。
朝7時を過ぎると、ほとんどの釣りボートは湖に出て行ってしまっているので静か。
ここでも、釣り人は元気いっぱいだ!
コンクリートのスロープを蹴って、奥利根湖に浮いた。
湖は、裏磐梯にある小野川湖以来。
奥に見える雪山はイラサワ山だろうか?
奥利根湖の全体像は「Y」の字の形をしている。
初めて浮かんだ自分には、右と左どっちの景色がいいのかわからない。
管理事務所の人に聞くと、即座に「右!」という答えが返ってきたので、右ルートへ行ってみることにする。
雪解け水が流れ込んでいる湖水はこの様な色をしている。
クリーミーで癒される色だ。
鏡の様な湖面。
風でさざ波が立っている場所との境界がはっきりわかる。
あまり雪をかぶっていない山が正面にある。
日陰山か赤倉岳だろうか?
真っ白な雪に覆われているもっと高い山をイメージしていたので、ちょっと違う気がする。
細かい木屑や枝に混じって、この様な流木も浮いている。
湖畔では、桜が咲いている所もあるので、季節感としては横浜よりも1ヶ月半くらい遅い感じだろうか。
初々しい若葉も出始めてはいるが、どちらからと言うとまだ冬の様相。
漕ぎ始めて1時間ちょっと。
上陸して少し休憩することにした。
ダム湖でかつ貯水率が99%以上のためか、なかなか上陸できる所が無いが、沢の流れ込みでこんな場所を見つけた。
沢からは澄んだ雪解け水が流れ、湖岸の白い砂と相まって素晴らしい景観を作っていた。
乳白色の砂は、カヤックから踏み出した足がズブズブと埋まってしまうくらい柔らかく堆積している。
だいぶ渓谷の幅が狭くなってきた。
水の色は所々で色が微妙に違う。
そして、枯れ木の間に直立している針葉樹林が新鮮に見える。
もっと狭い所を進んで行くのかと思っていたら、急に最深部が現れた。
ここから先は水深も浅いし、流れも急なので川をさかのぼって行く事はできない。
出艇場所からここまでは10キロちょっとなので、ノンビリと2時間も漕げば着いてしまう。
利根川の源流は、ここから更に10キロさかのぼった大水上山と言われている。
この場所でキャンプが許されるのであれば、ここにカヤックを置いて、沢の奥まで歩いて行ってみたい。
見える景色が違うので、復路も飽きない。
山から崩れ落ちた雪の固まりが浮いていたりする。
途中、ある沢の入り江で、ボートに乗った年配の男性と会い少し話しをした。
この男性は年に60回もこの湖に来るらしい。
いくら釣りが好きだと言っても、その数は尋常ではない。
1年の半分は雪に閉ざされているので、残り6ヶ月の内2ヶ月はここにいるということになる。
たぶん、奥利根湖は季節毎に表情を変え、この男性を楽しませているんだろう。
「湖から15分ほど行った場所でテントを張っているので、帰りにコーヒーでも飲んでいきなさい。」
とお誘いを受けた。
沢の流れ込み。
キラキラと澄んで、汚れのない水だ。
滝はいたるところにあり、湖に冷たい水を流し込んでいる。
海では、大気中よりも水中の方が温かいが、ここでは逆。
手を入れると、まるで氷水の中に浸けてる様に冷たい。
この季節にカヤックを転覆させたら、5分でハイポサーミアにかかるだろう。
感覚は海と違う。
なんて言ったらいいんだろ…"旅する感覚" とでも言うか、自然から自分の中に何かが流れ込んでくるような感じを受ける。
たぶん川旅というのは、こんな感覚なのかもしれない。
ちょっと、今年あたりやってみようかな。
お腹がすいたので、幅10センチくらいの水しか流れていない枯れた沢に上陸。
雪の上にカヤックを引き上げた。
イス代わりの大きな木に腰掛け、ゆっくりと食事をする。
全ての木は、斜面から真横に幹を伸ばし、グイっと上空に向かって成長している。
生命は力強い。
小さな沢を出発し、"左ルート" の入口から少しだけ中に入ってみた。
こっちの方がいい景色に見える…。
帰り道、例の男性のテントに寄ってみた。
ボートは置いてあったが、残念ながら主は留守だった。
簡単な手紙を書いてテントの中のテーブルに置き、奥利根湖を後にした。