チームオーダー 〜笑顔なき表彰台〜

2013年マレーシアグランプリも、ライブでは観ていない。
レースは、レッドブルの1-2で終わったが、どうも表彰台では笑顔がなかったようだ。
理由は、セバスチャン・ベッテルがチームオーダーを無視して、トップを走っていたチームメイトのマーク・ウェバーを抜き優勝したから…。

もっとも有名で悲劇を生んだのは、ジル・ヴィルヌーヴとディディエ・ピローニの確執だ。
1982年、イモラサーキットで行われたサンマリノ・グランプリで "それ" は起こった。
レース中盤から首位に立ったジルに対して、ピットからは「SLOW」の指示が出た。ところが2位を走っていたディディエはジルに追いつき、無抵抗のジルを抜いてしまった。

チームメイトに裏切られたジルに表彰台の笑顔はなく、次戦ゾルダーで行われたベルギー・グランプリの予選でジルは事故死してしまう。
予選をリードしていたディディエに対して無理をした…という説が一般的だが真相はわからない。
そして、同じ年ホッケンハイムで行われたドイツ・グランプリでディディエも事故を起こしF1から引退、その5年後パワーボートのレースで命を落とした。
チームオーダーは、チームとドライバーが取り決めた何らかのルールだったり、レース中に決めたチームの戦略でオーダーが発令される。
ただ、レースをつまらなくするという理由で、2003年から2010年のシーズンでは禁止されていた。
そして、2011年からは許されるようになった。
チームオーダーは、ドライバーに複雑な心境を与える。
順位が落ち着いた時点でマシンのスピードに大きな違いが無ければ、あまり問題は起こらない。
ただ、チームからポジションキープの指示が出て、かつ前を走っているドライバーが前車とポジションを争っていない場合は、間違いなくペースダウンの指示がある。
ところが、後ろにいるドライバーの方は本能的にレースを続けているので、どんどんチームメイトとの差が縮まってくる。
目の前にマシンが現れ、明らかに自分の方が速いと思ったら、それを抜きたいと思うのはレーシングドライバーの本能だ。
ここにチームオーダーの落とし穴がある。
もし私がチームの方針を決める立場であったなら…チームオーダーは出さない。
しかし、ドライバーは "For The Team" の精神を持っていなければならない。
私が取り決めるルールは一つだけ。
「チームメイトに対して接触やアクシデントのリスクがあるポジション争いをしてはならない。」
一流のF1ドライバーであれば、こんなことは簡単に守れるはずだ。
このルールを守れないドライバーとは契約しない。
チームオーダーは、チーム監督に楽をさせる。しかし、私ならあえてオーダーは出さない。
チームオーダーは、F1という高度に管理された戦いの中で、"人間" を浮き彫りにする。
それを見るのも面白い。