東北の夏 2日目〜雄物川〜
夜は蒸し暑くもなくしっかり寝られた。
朝は思ったよりも肌寒く、念のために持ってきていたトレントシェル・ジャケットを羽織ることになった。

熱いコーヒーを飲みながら今日の予定を考えてみる。
そもそも自分はリバーツーリングの経験が少ない…と言うかほとんど無いに等しい。
初めて下った那珂川ではいくつかの教訓があった。
→川はどんなだ 〜那珂川〜
川ではどこから出艇できるのかわかりづらいし、上陸地点での撤収と公共交通機関へのアクセスも考えておかないといけない。
雄物川のツーリング計画のきっかけとなったBe-Palの野田さんの記事によると、この川ではカヌークルージングの為に船着場が整備されているらしい。
国土交通省 東北地方整備局のサイトの説明を抜粋してみる…
======
国土交通省秋田河川国道事務所と湯沢河川国道事務所では、こうした水面利用者の増加をきっかけに、だれもが安全に、安心して乗り降りできるカヌー発着場を雄物川全川に、27箇所しました。(国土交通省)
======
そして野田さんは、こんな事も書いている。
"雄物川のカヌー発着所に国土交通省は100億円以上の金を使っている。(中略)大金をかけて作ったその発着所も半分は土砂に埋まり、大水で川の流れが変わったため水辺には遠く、機能していない。"
ふ〜む…
======
カヌー発着場では、カヌー利用者などと連携を図り、安全性や利便性を考慮した形状や、景観に配慮した工法を取り入れています。 また、水面からの利便性だけでなく、周辺地域やまちの施設などと連携し、川とまちの一体化を図る拠点施設として整備しました。(国土交通省)
======
→船着場紹介
このページには、27ヶ所の船着場が写真付きで紹介されている。
写真を見る限り、川へエントリーする際の障害物にしか見えず、とてもカヌーをやる人の為に作った物には見えない。
しかし、川へのエントリー場所がわからない自分としては、とりあえずこの場所を頼るしかない。
考えていた計画はこんな感じ…
出艇場所は大曲の近くにある18番の丸子川、12番の強首(こわくび)でキャンプを張り、2番の茨島(ばらしま)で撤収する。
秋田でホテルに泊まり、月曜日に大曲に置いた車をピックアップして帰る。
スマホで見る天気予報は相変わらず微妙な状況を表示している。
ツーリング2日目の撤収時に雨が振り出し、ひょっとしたら大雨になるかもしれない。
結局、コーヒーを飲み終わるまでに計画を決めることはできなかった。

サイトを見ても船着場の正確な位置がわからないので、だいたいの場所と写真を頼りに、出艇場所を探すこと30分。
やっと12番の船着場を見つけることができた。
暑い!
荷物を降ろしたこの場所はあまりにも暑過ぎるので、すぐ近くの木の下でカヤックを組み立てた。
汗がしたたり落ちる。


======
川への近づきやすさを考慮した階段状の発着場を整備しました。(国土交通省)
======
カヌーをやる者にとって、これが使いやすい "船着場" かどうかは、すぐにわかると思う。
はっきり言ってこの船着場は "クソ!!" だ。
一度でもカヌーやカヤックをやったことのある人間であれば、間違ってもこんな物は作らない。
自分は、この醜い階段下にカヤックを降ろす際、堆積した泥で足を滑らし、両足を擦りむいてしまった。
野田さんの言ってたことは正しい。
国はただ100億円の税金を使い不要な物を作っただけだ。
そして、作った後はほったらかしていて、何の役にもたっていない。
→18番の丸子川船着場(国土交通省)
また怪しさはそれだけではない。
船着場の案内は、幹線道路に立っている小さな案内板だけで、具体的な場所の案内はない。
住民に "川を整備していますよ" と見せかけているだけだ。
また、船着場には駅のホームにある駅名標の様な看板があるが、川から見えない所も多い。
とたんに、予定しているその他の船着場の状態も心配になった。

とにもかくにも下り始めた。
カヤックにはキャンプ道具も積んでいる。
天候が好転した場合は、最初に計画していたとおり2日間の予定で河口の近くまで行けるだろう。

川の雰囲気は素晴らしい。
川の上から見える人工物は橋くらいで、その他の人工物はいっさい見えない。
ただ、思ったよりも川の流れがなく、しっかり漕がないと進んでいかない。

朝飯が早かったので、出艇地から5キロしか進んでいないのに昼飯にすることにした。
タケさんから教えてもらった早ゆでパスタに100均で買ったペペロンチーノのソースをからめて食べた。
ゆで時間が1分というのは燃料に優しくていい。
擦りむいた足は打撲もしているようで、しっかり腫れている。
カヤックからファーストエイドキットを出し、漢方薬屋さんで買った薬を塗り込んだ。

川は相変わらずゆったりと流れている。
西風が出て来たので、流れの向きによってはけっこうな向かい風になり、パドルを休めると上流に押し戻されてしまう。
那珂川の経験から、漕がなくても時速4〜5キロで流れていくだろうと思っていたけど、その予想はまったく間違っていた。
予定の行程は65キロあり、明日は45キロある。
明日は今日よりも風が強く、場所によっては12メートルくらいの西風が吹くので、その中を45キロ進むのは難しいかもしれない。
かと言って、途中で撤収するにしても川が道路から離れている場所もあるので、どこでもいいとは限らない。
はてさて困った…と考えながら漕いでいると、岸の右側にマックスバリューの建物が見えてきた。
場所は刈和野だ。
民家が近いせいか、水もあまり綺麗じゃなくなってきているので、いったん上陸することにした。
で、14番の刈和野の船着場はどこ?

まさかココなの?…という場所に上陸してみた。
コンクリートのスロープが泥で滑って危なく、舟を引き上げる場所も無い。
国土交通省のサイトで紹介されている、写真と比べてみてほしい。
→14番の刈和野船着場(国土交通省)
さて!
どうしよう。
強首もちゃんと上陸できる場所なのか怪しくなってきた。
水は泡立ち、岸辺の木にはビニールなどのゴミが沢山からみついている。
流れは無く向い風で、明日には雨が降ってくる…いろいろな事を考えると、このまま先に進んでも楽しくないような気がしてきた。
よしっ撤収!
ここならJRの刈和野駅も近いので、丸子川に置いた車も取りに行きやすい。

移動距離は16.2キロ。
2度目のリバーツーリングでも、川の楽しさを味わうことができなかった。
丸子川から車を取ってきて、当初1日目の上陸&キャンプ予定地だった強首の船着場を見に行った。
ここは、丸子川や刈和野よりも酷く、上陸地点には泥と雑草があるだけだった。
また、周囲にも雑草が生い茂り、とてもキャンプができるような場所ではなかった。
天敵の虻もいたし…。
川旅はどうやってすればいいんだろ?
雄物川について言えば、船着場は無視した方が良さそうだ。
橋の近くであれば、出艇や上陸ができそうな感じなので、とりあえず適当な橋を見つけて舟を出し、中州でキャンプをしながら下って行くのが正解なような気がする。
とりあえず、雄物川にはキャンプ適地な河原や中州はふんだんにある。
秋田市内に移動し、ホテルでシャワーを浴びた後、近くの飲み屋に繰り出した。
適当に入った店は、今までに行った飲み屋の中でもベスト!!と呼べるほど最高に楽しい店だった。
リバーツーリングの神様にはそっぽを向かれているけど、飲み屋の神様には微笑んでもらった。
世の中悪い事ばかりじゃない。
(3日目につづく)