トヨタの運 〜ル・マン24時間〜

LeMans24_2016.jpg.jpgチームの弱さ、そして自動車会社の弱さを見せた2014年のレースから2年。
底力 〜ル・マン24時間レースの明と暗〜

今年もル・マン24時間レースが終わった。
昨年の惨敗から復活したトヨタが素晴らしいレースを戦ったものの、ゴールまで残り5分でその夢は砕け散り、終盤の緊急ピットインで優勝を諦めていたポルシェチームと序盤のトラブルで表彰台を諦めていたアウディチームにとっては、正に ”棚からぼた餅” 的なエンディングになった。
サーキットには魔物が住み、レースとは非情なものだ。

レースから数日経ち、残り5分で優勝を逃した5号車のトラブル原因が「ターボチャージャーとインタークーラーを繋ぐ吸気ダクト回りの不具合によるもので、これにより、ターボチャージャーの制御が失われた」と発表された。
2014年と同様に、わかったようなわからないような原因だけど、トラブルがレーススタート後14時間であろうと残り5分であろうと最終成績が ”リタイヤ” という記録は変わらない。
不思議だったのは、スローダウンした5号車がピット前のウォールの横でマシンを停めた事だ。

あるレース評論家はこう言っている。
「5号車が勝てなくても6号車が2位を取れるので、5号車は優勝だけを考えていた。あの時点でピットインをすれば確実に優勝できなかったので、ピット前で対応するしかなかったし、ゴールライン前で一旦ストップしポルシェに続いてゴールする事も考えなかった。」
果たしてそれが理由だったのだろうか?
もし、それがトヨタチームの考えた事であれば、トヨタは来年も勝てない。

ポルシェ2号車は90秒後ろにいた。
僕がチームのディレクターだったら、トラブル状況をドライバーに確認した10秒後には優勝を諦め、確実に2位を取る道を選んだだろう。
そうすれば、トヨタは2位と3位を取れた。
ル・マンの優勝はトヨタの悲願であるものの、同時に2016年のチャンピオンシップを戦っているからだ。
トヨタ5号車を30秒差で追っていたポルシェ2号車は、フィニッシュまで残り10分となったところでピットインし、タイヤ交換と給油を行っている。優勝は諦め2位を確実なものにし、"ひょっとしたら" に備えるためだ。
それが「レース屋」の考える作戦なのだ。