テーマパークへようこそ 下北3日目〜武士泊から福浦〜

夜、テントの中を飛び回る蚊が気になったが、真夏にもかかわらずぐっすり眠ることができた。
蒸し暑い日本海側ならこうはいかないだろう。
目が覚めてテントを出ると、ハマちゃんは既に起きていた。

昨日話し合って、今日のゴールは「福浦」と決めている。
福浦到着後、12時50分の高速艇ポーラスターに乗って今日の宿を確保してある脇野沢まで行く。
地図を見ながらこのブログを読んでいる方は、ここで「?マーク」が10個くらい頭の周りを回っていることと思う。
なぜ青森ではなく脇野沢?
今回の計画を立てた際、私は3日目の夜は青森の宿に泊まり、美味い飯を食い美味い酒を飲むのを楽しみにしていた。
ところが!
昨日の夕方、スマホで宿を検索すると素泊まりで3万円以上もする宿しか出てこない。
あれ〜〜おかしいなぁ〜〜と思いながら、青森駅に近いビジネスホテルに電話をすると、どこも満室でとれない。
唯一空いていたルートインの部屋を押さえようとした時に、ふと不安になって一泊の料金を聞いてみた。
カワイイ声のおねえさんが耳元で囁いた金額は、なんと通常の3倍だった!
速攻で断った後、ハマちゃんと首を傾げた。
「なんで?」
「31日に青森のビジネルホテルに泊まった時は、4000円ちょっとでしたよ。」
ここで、2日前の青森駅で見たノボリを思い出した。
「"ねぶた"だぁ!」

ねぶた祭りが2日から始まっていた。
ふ〜〜む…そうなると、青森市内に宿を取って美味い飯を食い…などという計画は夢のまた夢。
打ち出の小槌を持っていない我々にとって、一泊1万2千円オーバーのビジネスホテルに泊まるなどという贅沢が許されるわけがない。
仕方がない。
そうとなったら、ねぶたの影響を受けない(だろう)シィラインの港がある福浦や佐井の宿にするしかない。
電話をしてみた。
なんと!どこも満室である。
唯一、福浦の民宿のおばちゃんからのオファーはこんな感じ。
「普通の部屋じゃなくてもよければなんとかできるかも…」
「普通の部屋じゃないというのはどんな部屋なんですか?(^^;」
「2段ベットになってて、少し荷物が置いてある部屋でよければ…」
たぶん普段は民宿の子供達が寝ている部屋?
「あっ…であればいいです(^^;」
仕方がない…福浦から乗ったポーラスターを途中で降りることになるけど、脇野沢の民宿はどうだろう?
最初に電話した宿に空きがあり、電話に出たおねえさんがハキハキして感じよかったのでそこで決定。
ようやく脇野沢に宿を確保する事が出来た。
しかし、何故どこの宿も満室だったんだろう?

武士泊 下北半島すでにブンブン飛び回っているアブや蚊を追い払いながら朝飯を食い、予定通り7時に出艇。
ガラスの浮き玉は、空になったソフトクーラーに5個入れる事が出来た。
自分へのお土産はこれでOK。

下北半島アブと蚊の大群を除けば、昨夜の浜はなかなか快適だった。
しかし、残念ながら沢の流れ込みは無く水浴びすることはできなかった。
昨日は見かけなかった滝も、今日は何箇所かで海に流れ落ちている。
特にこの写真の滝は水量がいい感じだったので、海に直接落ちているならカヤックに乗ったまま下まで行って水浴びしたかった。
しかし、残念ながら落下地点までいくことはできなかった。

焼山崎 下北半島焼山崎が見えてきた。
山にはガスがかかり、幻想的な雰囲気が漂っている。

焼山崎 下北半島焼山崎 下北半島焼山崎。
ここは、伊豆の黄金崎に似た赤褐色の岩肌を持つ山が連なっている。
岩質は火山岩の一種である玄武岩(げんぶがん)。
玄武岩は鉄分を多く含むため、風化を受けると赤褐色に変化する。
最も近い道路でも内陸に4キロほど入ったところなので、陸から人は来れないが、所々にキャンプできそうな浜があった。
次回来た時(来るのか?!)は、この辺りでキャンプするのもいいかもしれない。
ちなみに、黄金崎には一泊5,000円以上する"高級"なキャンプ場があったり、傲慢で口うるさいダイビングショップがあるので、私はあまりいい印象を持っていない。

焼山崎 下北半島焼山崎 下北半島焼山崎 下北半島人工物が全くない。
この場所にいる人間は、小舟で漁をしている人と我々だけ。
人間の手が入っていないという意味で、このエリアはとても貴重だと思うし、カヤックフィールドとしても素晴らしい。
私が漕いだエリアでこの雰囲気に近いのは、礼文島の西海岸と隠岐。
そして、日本国内で最も自然が色濃く残っているのが知床半島。
そう言えば、カヤック仲間のキッカーは今週末からソロで知床半島に遠征する。使うのはファルトボートだ。


KIWI&ATCスポーツさんが行った焼山崎シーカヤックツアーの様子がyoutubeにあったので紹介します。

P8030182.jpg潮の透明度はこんな感じ。
ハマちゃんが飛んでいる。

牛滝 下北半島シィラインの港がある牛滝(うしたき)を過ぎると岩肌が変わった。
焼山崎と対照的なこの白い岩肌は、海底火山活動によりできた緑色凝灰岩(りょくしょくぎょうかいがん)。
通称グリーンタフと呼ばれるこの岩質は、北海道の南端から青森、秋田、日本海側に広く見られ、フォッサマグナの部分と伊豆にもある。
なぜフォッサマグナに海底火山でできた岩があるのか?大昔の日本列島は南北(東西?)で分断されていて、そこが海だったからだ。
中新世前期の日本列島

仏ヶ浦 下北半島仏ヶ浦 下北半島牛滝から20分ほど行くと、有名な仏ヶ浦(ほとけがうら)がある。
仏ヶ浦を見た高知県出身の歌人 大町桂月(おおまちけいげつ)は、「神のわざ 鬼の手づくり仏宇陀(ほとけうだ) 人の世ならぬ処なりけり」と詠っているが、確かにあの世への入り囗があるならこんな場所なのでは?…と思えなくもない。
ハマちゃんに声をかける。
「上陸するんですかぁ?」
「しません!」
お互いに、観光客が大勢歩いている場所に興味は無いようだ。
しかし、もしこの場所が観光名所ではなく、人もやって来れない場所だったら…、必ず上陸してその雰囲気を味わっただろう。

下北半島下北半島仏ヶ浦の先に広がっていた透明な海を漕ぎ渡り、黒っぽい岩質で垂直に立ち上がった岩山を回り込むと…、二人は声を失ってしまった。

福浦 柱状節理 下北半島大迫力の岩山がパノラマの様に目の前に現れた。
その先に続く、火山活動の名残や柱状節理が本当に素晴らしい!
まさにここは大人のテーマパークだ。

福浦 柱状節理 下北半島ここを回り込むと、今日のゴール福浦。

福浦 下北半島10時、福浦港に上陸。
イカを干している女性がいたので、一言断ってからカヤックを引き上げた。
カヤックウェアのまま集落にある商店でビールを買い、ついでにポーラスターの乗船券も購入した。
ここ福浦から脇野沢まで乗る人は少ないのか、金額を何度も確認していた。
港に戻り、ハマちゃんとお疲れさまの乾杯!普段は絶対に飲まないアサヒのドライが抜群に美味い!
ポーラスターの出航までは時間がある。
のんびり片付けをしていると、漁師のオジサンがやって来たので、楽しく会話しながら撤収をする。
今日は選挙があるので、漁は休みらしい。
それにしても、地元の三浦や伊豆で邪魔者扱いされている我々カヤッカーが、地方の村や漁港では、大人からも子供からもフレンドリーに接してもらえる。
とても嬉しい。

福浦 下北半島微妙に時間がなくなってしまったので、昼飯はご当地カップラーメンで済ませ、乗り場まで荷物を運んでポーラスターの到着を待つ。
2つの荷物にまとめてあるハマちゃんに比べ、私の荷物はゴミ袋も入れて5つ。完敗である。

時間通りに出航したポーラスターは快適だった。
我々が漕いできたルートをもう一度辿るのも面白いものだが、なぜか心に響いてくるものがない。
あらためて、カヤックは自然と一体になれる乗り物だと思った。

脇野沢で下船し、今宵の宿「民宿栄屋」さんに到着。
元気で感じのよかった女性は、実物も元気で感じがよかった。
私のカヤックは、ここからゆうパックで発送。
赤い郵便局の車に積み込む時も、黒いトラベルスタイルバックにはアブがまとわりついている。
やっぱり黒っぽい色が好みのようだ。
ハマちゃんは、明日から向かう場所の調査に余念がない。

そういえば、福浦の商店でこんな話を聞いた。
「なぜこのあたりの民宿はどこも満室なんですかね?」
「今NHKの人達がたくさん来てて、下北半島をドローンで撮影しているんですよ。」
なるほど…敵はねぶただけではなかった。

(あとがき:2020-5-3)
この時下北半島に来ていたNHKは「精霊の守り人 悲しき破壊神」の撮影チームだったと思われる。
仏ヶ浦で撮影されたその時のシーンは、第3話の35分あたりから登場する。

シーカヤック 下北半島(4日目につづく)