絶好調(?) 北アルプス2日目〜小蓮華山から蓮華温泉〜
山の朝は早い。
この日も4時には目の前の部屋からガサゴソとザックをパッキングする音が聞こえてきて、自分も目を覚ました。
今日は小蓮華山まで行き、そこから折り返して蓮華温泉まで行く。
遅い時間に4時間以上運転して帰りたくないので、普通なら蓮華温泉でもう一泊、もしくは栂池に下りてもう一泊…というプランを考えるところだが、今回は、"夫婦で山歩きですか?"って言われちゃう女子1号が一緒なので、できれば "もう一泊" は無しで帰った方がいいような気もする。
…ということで、どっちに転んでもいいように蓮華温泉出発の14時40分発のバスに間に合うように行動することにした。
もちろん、白馬大池から車を停めてある栂池に下りる方が時間的にも早いし、バスの時間も気にしなくていいのだが、「あの大岩を下るのは嫌だなぁ」という女子1号の意見と、「できれば違う道を通って下りたい」という2人の意見で、蓮華温泉に下る事にした。
6時近くになると、雷鳥坂に朝陽が当たりモルゲンロートになった。
しかし、これを見て最高の1日になりそうだぁ〜と気を許してはいけない。今日は台風25号が日本海側を通過するので、予想では昼前くらいから強い風が吹き出す。
我々は、その時間には稜線を外れ、ここ白馬大池まで戻って来る計画だ。
天空へ続く様な蓮華温泉への分岐を右に見て、雷鳥坂を登って行く。
白馬大池から小蓮華山までのコースタイムは2時間。
標高差は400メートルだけど、多少アップダウンがあるので累積標高差は500メートル以上ある。
しかし、素晴らしい景色に360度囲まれた尾根道を歩いて行くので、全く疲れを感じない。
昨日、寝不足高山病(?)を発症した私は、別人の様に元気で、ノンストップで小蓮華山まで行けそうなくらい絶好調である。
「こんな稜線の尾根道を歩きたかったぁ」…な素晴らしい道が次から次に現れる。
そして、白馬岳が益々近くに見えてきた。
白馬岳と白馬鑓ヶ岳の間には、劒岳が頭を出している。
小蓮華山の山頂に到着。
ここから続く道は、まっすぐ白馬岳に繋がっている。
西を見ると、鉢ヶ岳から雪倉岳へ続く山並みが素晴らしい色彩で広がり、南を向けば白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の荒々しい山肌がパノラマの様に広がっている。
刻々と姿を変える雲や麓から湧き上がるガスも相まって、時間が許せば、いつまでもこの場所にいられるだろう。
この稜線を目の当たりにしたら、ここから引き返すのはめちゃくちゃ悔しい…ってことで、少しだけ先に進んでみる事にした。
歩き始めると、「このまま白馬岳まで行き、今日は白馬山荘に泊まって明日下山しようか」…などという考えが浮かんだ。
しかし、今日の午後から明日にかけては、強風がこの稜線に吹き荒れる。
残念だけど、お楽しみは来年計画されている「白馬大雪渓遠征」まで我慢する事にして、三国境の手前で引き返した。
帰りの景色も素晴らしく、全く疲れを感じない。
今回の様な行程であれば、真夜中に家を出発しなくても大丈夫だし、標高差少なく危険な個所も無いので、運動不足のシュニンでも来れる。
帰ったら報告会を開催して、来年はその気になってもらおう。
青空が映り込んだ白馬大池が美しい。
予定よりも先まで行って折り返したにも関わらず、白馬大池には早く戻って来れた。
パスタを食べ、のんびりとコーヒーを飲んでいると、テントを畳む人がバタバタと音を立てているので、風が強くなってきた事がわかった。
蓮華温泉から出るバスの時間は14時40分。
地図では、蓮華温泉までのコースタイムは2時間と書いてあるが、少し余裕を持って出発する事にした。
紅葉は終わりに近いけど、それでもダケカンバの白い幹やカラフルに色づいた山肌が美しい。
上空では、吹き始めた風がゴーゴーと音を立てている。
蓮華温泉は、白馬大池から900メートル下った所にある。
下り始めは岩だらけの道が続くが、その後は危険個所もなく景色もいい。
登って来る人がいたので、「登りは大変じゃないですか?」と聞いたら「景色もいいし、特に大変ではないですよ。」という答えが返ってきた。
その後すれ違った何人かも苦しそうな様子ではなかったので、標高差で感じるほど大変な道ではないのかもしれない。
落ち葉の絨毯を踏んで行く。
コースタイムから20分遅れて蓮華温泉に到着。
女子1号が遅れ気味だったこともあるけど、山と高原地図に記載されているコースタイム通りに歩くのは我々の様な年配の登山者には無理。
実際のコースタイムは白馬村の情報が正しいので、そちらを参考にした方が無難。
⇨白馬村観光局 登山モデルコース
蓮華温泉ロッジは、想像していたよりも洗練された佇まいだった。
ところが、バス停の場所を確認する時に予想外のアドバイスをされた。
「どこまで行かれますか?台風の影響でJRが止まっているみたいです。」
「…」
携帯が通じないので、それ以上の情報はわからない。
蓮華温泉から栂池駐車場までは、路線バスとJR、そして小谷村の村営バスを乗り継いで戻る。
JRが動いていないとすると、平岩駅から南小谷(みなみおたり)駅までタクシーで移動しなければならず、駅前にタクシーが止まっていなかった場合は、村営バスの乗り継ぎに間に合わない。
ふむ…お金持ちなら帰れるけど、我々は帰れません。
(あとがき)
翌日、路線バスに1時間揺られて無人の平岩駅に着くと今日もJRは運休している。
すかさず、駅舎に貼ってあったタクシー会社に電話をかける。
「今、平岩駅なんですが、タクシーを1台まわしてもらえますか?」
少し間があり…「え〜と、代行で1台向かっているんですが、まだ来てませんか?」
都会で言うところの振替輸送をタクシーが代行している事がわかり、慌てて駅前に出てみると、ちょうど1台のタクシーが滑り込んで来るところだった。
我々を乗せると、運転手さんはタクシー会社に連絡を取り、次の駅に向かって走り始めた。
平岩駅から南小谷駅の間にある駅に立ち寄りながら乗客を乗せていくらしいが、タクシーには後2人しか乗れない。
それよりも、我々が南小谷駅で乗り継ぐ村営バスの発車時間に間に合わないかもしれない。
その事を運転手さんに告げると、運転手さんは立ち寄った駅に着くやハヤテのごとくタクシーから飛び出し、ダッシュでJRの乗客がいるかどうかを確認してくれた。
そんな運転手さんのおかげで、無事村営バスに乗る事ができた。
もちろんタクシー代金はかからず、料金は南小谷駅にいた駅員さんに平岩駅から南小谷駅までの電車運賃を払っただけ。
海でも山でもワンウェイ旅は面白い。。