平館海峡横断 下北2日目前半〜蟹田から九艘泊〜

2日目の朝、すぐ近くを走る列車の音で目が覚めた。
4時半…ハマちゃんはまだ寝ているようだ。
さっそくテントを抜け出し、"今日の海" を見に行った。

蟹田海に近づいても、風の音も波の音も聞こえない。
そして、梯子を登って海岸に降り立つと、そこには昨日とは全く違う海が広がっていた。

蟹田"テン場" に戻って、ヒルバーグ越しに「最高の海である事」をハマちゃんに伝え、私は即行でテントを撤収。
朝飯は海を見ながら食べることにした。
浜に転がっていたプラスチックのじょうろを椅子代わりに、昨日買っておいたパンを牛乳で流し込み、ケトルで沸かしたお湯でコーヒーを入れた。
腹が出来上がったところで、スキップでコンビニに行き、4食分の食材と酒を仕入れ、冷えた到着ビールを飲むための氷もクーラーに突っ込む。
残ったパンは行動食としてデッキバッグに収納。そして休憩時のリフレッシュアイテムは、2人ともトマトだ。
準備万端!

今日はまず、平館海峡(たいらだてかいきょう)を横断して、下北半島の九艘泊(くそうどまり)に渡る。
そこから岸沿いを北上し、適当な浜を見つけてキャンプ。
明日の予定はまだ立てていない。
平館海峡というのは、津軽半島と下北半島の間にある海峡で、最も幅のないところが約11キロ。蟹田は少し南に位置するので、今日の横断は約15キロある。

IMG_8713.jpg7キロ程度の湾は横断した事あるけど、海峡を横断するのは初めて。
霧の出やすい早朝の出発なので、コースタルカヤッキングではあまり使わないものを準備した。
一つは、シグナルライト。もう一つは、ハンディコンパスだ。
私はそれぞれ、eGear製の「ガーディアン・シグナル・ライト -Guardian Signal Light-」と「Suunto M3-D Leader Compass」を使っている。
今日は、対岸の下北半島が肉眼で見えるので、方向を見失うことはなさそうだけど、こんな場合は、どちらも装備しておいた方がいい。
ちなみに、ハマちゃんは私のものより大きなシグナルライトをいつもPFDに付けている。

蟹田P2210299.jpgiPhoneの「GPS-Trk」を起動させて、さあ出発。
情報によると、津軽海峡から平館海峡を通った潮は、陸奥湾の中で複雑な潮流を発生させるらしく、夏の大潮時の平館海峡では、1ノットを超える潮の流れが発生する。
今日は大潮で干潮は8時49分。満潮時との干満差は54センチ。
干満差は大きくないが、ちょうど潮止まりの時間帯で横断が終わる見込みだ。

例によって、私の荷物はデッキに溢れている。

平館海峡分厚い雲の先で、陸奥湾の奥が明るく見える。
その隙間から流れ込んだ日差しが、海上を柔らかく照らしている。

平館海峡平館海峡これ以上は望めない絶好のコンディションで、何の心配もない。
ハマちゃんのヒジも大丈夫そうだ。

平館海峡

ミズクラゲが異常に多い。
岸から離れた場所でこんなに沢山のミズクラゲは見たことがない。
透明度が高いので、海面からずいぶん下にいる奴も見える。
そんな時は、自分が宇宙空間の星の間を漂っている様な気がする。

平館海峡行程の2/3を過ぎたあたりで、潮目があった。
ここは流れが無いらしく、海藻の切れ端が漂い、泡が消えずに浮いている。
海峡の中は、潮が3等分されている感じで、前半と後半の1/3が海面に動きの無い無風ベタ凪だった。

平館海峡平館海峡 津軽海峡フェリー右手からフェリーがこっちに向かって来るのが見えた。
まあまあスピードが早い。
ハマちゃんにどうするか聞いてみると、先に行っちゃいましょうという返事だったので、ダッシュで横切ることにした。
果たして彼のヒジは耐えられるんだろうか?

先方も少し方向を変えたようで、すれ違った時にはだいぶ距離が開いていた。
船体の横には、「津軽海峡フェリー」と書いてある。
フェリーが後ろを通過し、少ししたところでユッタリとした気持ちのいい曳き波がやってきた。
そして、曳き波が収まり、凪の海に戻った時にそれは起こった。
突如、後ろでザッバァ〜ンという波の砕ける音がした。
何事だ!と思って後ろを振り向くと、何も無いところで大きな波が砕け、数十メートル後ろにいたハマちゃんがバウを下にして斜めになっている。
引き波の親玉本体(ハマちゃん命名)がやって来ていた。
後ろを振り返りながら漕いでいると、親玉がカヤックに追いつき、こちらも前のめりにサーフィンするハメになった。
ふ〜〜油断していただけにビックリした。
あとから写真を確認すると、すれ違ったのは2,367トンの「えさん2000」で巡航速度は17.5ノット。
津軽海峡フェリーには、「ブルーマーメイド」という8,820トン巡航速度20ノットという船もあるので、そんなデカいのやもっとデカいタンカーなどの引き波はどうなっちゃうんだろう?
ちなみに、速度が速いのはコンテナ船で、なんと24ノットも出るらしい。

平館海峡平館海峡九艘泊が近づいて来た…と思ったら、ココからが長く感じた。(実際にはそれほどかかっていない)

九艘泊九艘泊の漁港に入港。
カメモと共に、アブにも歓迎される。

九艘泊

漁港では村の漁師達が網の手入れをしていた。
港の端にカヤックを置かせてもらったことをことわり、ビールを売ってる店があるか聞いてみた。
残念ながら "ビールを売っていた店" は数年前に無くなってしまったらしい。
周りでは沢山のアブが飛びまくっていて、よそ者2人は手を振り回しながら落ち着きが無いが、村の人たちは気にしていないようだ。
刺されないのだろうか?
若い漁師さんに「蟹田からやって来た」ことを告げると、ちょっとついて来てと手招きされた。
どうも自宅らしい。
奥に消え戻って来た手には、キンキンに冷えたビールが握られていた。九艘泊九艘泊は、野生の猿が生息する世界最北限の地らしく、漁港の外れの小さな公園には「猿は友だち」というサトウハチローの詩碑がある。
そして脇野沢から続く道路はこの漁村までしか通じていない。正に最果ての地である。

(2日目後半につづく)