戦い 下北2日目後半〜九艘泊から武士泊〜

今回の遠征で一番気になっていた平館海峡(たいらだてかいきょう)の横断は、あっけなく終わってしまった。
残りの行程は、風も波もない下北半島沿岸を北上するだけなので、何の心配もいらない。
野営地は決めていないが、Googleマップを見る限り上陸できる場所は何箇所かありそうだ。
ただ一つ…気がかりがあるとすれば、予想通りに現れたアブや蚊の攻撃をいかに避け、彼らのいない浜を探せるか…だ。

下北半島10時40分に九艘泊(くそうどまり)を出発。
港を離れてもアブが数匹カヤックの周りを飛んでいる。
先行するハマちゃんは特に手を振り回している様子もないので、まとわりつかれているのは私だけのようだ。

下北半島

ハマちゃんから見る私の様子はこんな感じ。
パドルをビュンビュン振り回してアブと格闘している。
戦いはすでに始まっている。

下北半島 屏風岩P8020066.jpgパドルを振り回していてもカヤックは先に進まないので、ブ〜〜ンという音に注意しながら漕いで行く。
上の写真は屏風岩の辺り、西伊豆の恋人岬の雰囲気に似ている。
下北半島西海岸の海の色は、だいたいこんな感じで透明度も申し分なく癒され度100%。
そして、この沿岸でもミズクラゲが多い。

下北半島下北半島1時間ほど漕いだ所に上陸できる浜があったので、ハマちゃんが先にアブの状況を調査しに行く。
大丈夫そうだ。

上陸するとやっぱりアブはいた。
すぐさまハッチからパドリングパンツを引っ張りだして防御体制を整える。
しかし、慣れというのは恐ろしい。
九艘泊の港で、シルバーの乗用車がまだらに見えるほどアブのとまってるショッキングな様子を見ていたせいか、数匹のアブでは驚かなくなっている。
私がバハバッグを振り回してアブを追い払っているのを見てハマちゃんが声をかけた。

「そうやって追い払うと、かえってアブが襲ってくるんじゃないですかねぇ?」
「うんにゃ、九艘泊で見た漁師さんは何かをブンブン振り回して追い払ってた。」

どっちが正しいかはわからない。
ただし、どこかの海岸で蚊の大群に囲まれ、テントから出れなくなった経験のあるハマちゃんは、終始穏やかな様子でキーマカレーのスパゲッティを作っている。
まとわりつかれているのは私だけなのであろうか?

下北半島 材木岩P8020092.jpg材木岩の辺り。
柱状節理の岩が完全に横倒しになっていて珍しい。

下北半島下北半島 大崎素晴らしい海況、美しい海を滑るように大崎に向かう。
もうそろそろ野営地を見つけたい。

下北半島下北半島大崎を超えると、前方に上陸できそうな白い浜が見えたので、今度は私が先に近づいてみた。
沢もあるかもしれない。
まだ14時を少し回ったところだけど、これ以上漕ぐと明日漕ぐ場所が無くなってしまいそうなので、ここでテントを張ることにした。
焚き火用の薪も売るほど転がっている。

PowerFilm上陸後、スマホの充電バッテリー不足に備えて、PowerFilmを広げた。
これはエネループに充電するタイプのソーラーパネル。USB出力ではないのでスマホを繋げておかなくても大丈夫。

KAVU スローシャツ防御体制も強化した。
厚手のパンツとジャケットに着替え、アブ達の攻撃に備える。

早々とテントを張ったハマちゃんが困惑している。
ハマちゃんのテントはヒルバーグ。その濃いグリーンがお好きと見えてアブの大群が押し寄せ、この世のものとは思えない悲惨な状況になっている。
赤いフライを被せていない私のテントには一匹もいない。
その後、広げようとしたハマちゃんのタープは黒色。
これまた悲惨な状況になりそうだったので、途中で設営をキャンセル。
まさに、キャンプは戦いなのである。

そして、我々は思いついた。
キンチョーの蚊取り線香が効果あるように、アブも煙が嫌いなのではないだろうか…と。
もちろん蚊取り線香は人類対蚊を研究し尽くした傑作兵器。それに比べ焚き火の煙は “ただの煙” にしか過ぎない。
しかし、不利な戦いを強いられている我々にとっては、藁をもつかみたくなる作戦なのである。

IMG_8725.jpg

焚き火用の薪を集めに行ったハマちゃんが、ガラス製の浮き玉を見つけてきた。
どれどれと思って浜を歩いてみると、瞬く間にこれだけ拾うことができた。
はてさて、全部持って帰りたいけど、ただでさえデッキに荷物があふれている私の舟に積み込むことはできるのだろうか?
とりあえず “梱包” は明日考えることにする。

下北半島 津軽半島 武士泊津軽半島と北海道の間に夕日が沈んでいく。
すでにキンキンビールは飲み終わり、酒はウィスキーに移っている。
暗くなるとともにいなくなったアブの替わりに群がってきた蚊の大群も気にならないほど、素晴らしい景色が目の前に広がっている。

下北半島 津軽半島 武士泊下北半島 津軽半島 武士泊下北半島 津軽半島 武士泊下北半島 津軽半島 武士泊これは我々に対する地球からのご褒美に違いない。
長かった1日を思い出しながら、ただただ圧倒される。
しかし…戦いは終わっていなかった。

(3日目につづく)