河津塾 その1〜ミツバチはGPSを持っている〜

伊豆河津。
前回来たのはちょうど3ヶ月前の23日だった。
河津町上佐ヶ野で紅葉祭り

ひょっとしたら満開の河津桜が見えるかな?…と思っていた。
駐車場には観光バスが並び、河津桜観光交流館前には沢山の観光客が訪れていたが、残念ながら桜は2分咲き。


河津には仕事絡みで来ている。
今回の目的は河津産マンゴーの成長具合を見ること、そして農家の方との打ち合わせ。

P2230004.jpg P2230002.jpg 冬にもかかわらず、巨大なビニールハウスの中はポカポカ。Mountain Equipmentのジャケットはすぐに脱ぎ捨てた。
ちなみに、主の土屋さんは半袖。

マンゴーはすっと延びた茎の先に花が咲き始めている。3月になったら、受粉の為にハウスの中へミツバチが放たれる。
研究熱心な土屋さんは、いつも興味深い話をしてくれるが、今回は、このミツバチの話しを聞かせてくれた。


まずは、ミツバチの帰巣本能(きそうほんのう)について

ミツバチの行動半径は1.5キロほどであり、正確に巣に戻って来れる。
しかし、それは巣を覚えているわけではなく、"巣のあった場所" を覚えているので、単純に巣箱を移動させてしまうと戻って来れない。
これはどういう意味があるかというと、飼ってるミツバチの巣箱をある日突然ハウスの中に移動させたとしても、ミツバチはそこが巣だとわからなくなってしまう。
ではどうするか…
巣箱のGPS情報は、ミツバチの行動半径以上離れた場所(たとえば5キロくらい離れた山の中)に巣箱を持って行くとリセットされてしまう。そして、その後でハウスの中に移動させれば、ハウスの中が "巣の位置" になる…というすんぽう。
しかし、GPS情報がリセットされた直後のミツバチは興奮状態になってしまうので、最初に移動させた山の中で蓋を閉じたまま2〜3日置き、落ち着かせた後で移動させるのがいい…らしい。

ふ〜む...面白い!
ちなみに、この帰巣本能というのは、ミツバチに限ったことではなく、ハトやイヌなどにも備わっている能力で、320キロ離れた場所から戻ってきた猫の例もある。
アリューシャンの海で子供を育てるクジラなんて目的の場所に向かって何千キロも移動できるし、一万キロ以上を移動する渡り鳥もいる。
渡り鳥は空から見える地形も見ながら移動しているのかもしれないが、地面や海の中を移動する動物達は何を頼りにしているのだろうか...。


次に、女王蜂について

知ってのとおり、女王蜂は巣に1匹しかいない。
働き蜂の寿命が数ヶ月なのに対して、女王蜂は体も大きく寿命は7年あり、圧倒的な生命力がある。
では、その女王蜂が死んでしまったらどうするのか?
新しい女王蜂を作ることになる。卵の中にローヤルゼリーを入れることで、女王蜂が生まれるらしい。
もし、女王蜂が現役でいるにもかかわらず新しい女王蜂が誕生したらどうなるのか?
新しい女王蜂を中心とするグループができあがり、古いグループはその巣から外に出て行く。
しかし、ミツバチには縄張りがあるので、勝手知ったる古い巣の近くでは巣を作れない。知らない場所で新しいコロニーを作るには人手(蜂手?)がいるので、全体の2/3の働き蜂を連れていくらしい。


ん〜〜なんだかすごい!
人間が、あ〜でもないこ〜でもないってゴチャゴチャ生きているのとは違い、虫や動物達の生き方は、「種を保存」するという大原則に基づいている。
人間が滅びても、彼らは逞しく生き残っていくんだろうね。

ちなみに、果実は "別の木" の花粉がつかないと実はできない…らしい。
ん〜〜すごい!


(あとがき:2013-3-3)
土屋さんに質問してみた。
私「受粉で使うミツバチは日本ミツバチですか?それとも西洋ミツバチ? 」

土「西洋ミツバチです。ご存じかもしれませんが、西洋ミツバチは体が日本ミツバチより大きく一度に多くの蜜を集めます。一般的に養蜂家は蜜を多く集める西洋ミツバチを飼います。
一方日本ミツバチは自然界に生息しています。体は小さく動きも活発ですが、人が飼うことが難しいのと、野草など小さな花の蜜は集めますが、ミカンなど沢山の蜜がある花はあまり好みません。
日本ミツバチの蜜は希少価値と自然蜜が売りで大変高価ですが、蜜の質は西洋ミツバチの集めたみかんや、レンゲには及びません。味は複雑な味で、西洋ミツバチが集めた雑花の蜜と一緒です。
近年はそのような蜜も売れますが、以前は雑蜜と言って蜂の越冬用の餌にしました。」

土「ミツバチの件追加です。日本ミツバチはあまり刺しませんが、西洋は凶暴で扱いが悪かったり天気が悪い日などは攻撃してきます。今日も油断しあちこち刺されました。
もちろん痛いですが免疫となっていますのであまり腫れません。働き者で感謝ですが機嫌次第では強烈です。慣れてきますと肩こりがある人はわざと刺されるそうですが…今度の機会に一度試されては? 」

私は肩こりではないので、実験は遠慮です。

(その2につづく)