赤旗は2時間早くやってきた 南房総1日目〜金谷から元名海岸〜
2013年3月16日 土曜日。
朝7時20分出航のフェリーで千葉に向かっている。
週初めに見た天気図では、土日は抜群の気圧配置。
しかし、日が経つごとに期待が願いに変わり、当日の朝見た海況では「今日は移動日」になりそうだった。
フェリーは遊びモード全開の乗客で満員。
朝だというのに、さっそく宴会を初めているグループもある。
海の様子が知りたくて、コーヒーを片手にデッキに出てみた。風が気持ちいい!


浦賀水道には沢山の船が浮かび、スピードを落としたフェリーの前を山の様にコンテナを積んだITALIA船が横切っていった。
どう見ても船尾が沈み右側の方が重そうな船体だが、荒れた海でも積荷は落ちないのだろうか?

金谷のいつもの場所で、カヤックを組立て、9時20分出航の久里浜行きフェリーを追うように出艇した。
予報によると、南西が吹き出すのは13時。
うまくいけば、それまでに今日の宿がある富浦に着けるかもしれない。

金谷港の堤防を回りバウを南に向けた。
暫くは "平和な海" が続いているようだ。
昨年冬の同じ場所がイヤになるような状況だった事を思えば、正に雲泥の差。
⇨風の千葉 1日目 浸水編〜金谷から富浦〜
例によって、明鐘岬(みょうがねみさき)を越えた辺りから風が上がってきた。
しかし今日の風は地形による風ではなさそうだ。
予定より2時間も早く南西が吹き出したらしい。
高さを上げてきた波を右舷に受け、風で横を向こうとするカヤックをなだめながら辛抱強く行く。
波の谷間へブレードを差し込むとカヤックが安定しないし、前へ進めるパワーも伝わらないので、なるべく波の山へ差し込むようにタイミングを計って漕いでみる。
このまま行けないこともない感じだが、保田方向を見ると海上が真っ白に変わっていくのが見えた。

無理はせず、近くに見えた海岸に上陸した。
しかし、今日は一旦吹き出した風は、夜になるまで落ちない予報。
ん〜〜このまま舟を畳んで陸上移動になる可能性は99%くらいある。
腰の曲がったオバサンが通りかかった。
「昨日は静かだったけど南が吹いてきちゃったねえ」
漁師っぽいオジサンも海を見にきた。
「今日は赤旗だからな 昨日は凪ぎだった」

ここは元名海岸という場所だった。
こういう事でもなければ、一生上陸しなかった浜なんだなあ〜と思い、それなりに楽しんでしまうことにした。
予定通りにいかないことをくよくよ考えてしまう人は、カヤック旅に向かない。

元名海岸は、なかなかいい所だ。
公衆トイレもあるし、ビールを飲みながら昼飯を食べるのにちょうどいい椅子もある。
浜の真ん前にあるリゾートホテルにでも泊まれば、いい休日が過ごせるかもしれない。

なんだかんだと3時間もノンビリ過ごした後で、撤収作業を開始。
4キロしか漕いでないのに、ウィスパーはトラベルスタイルバッグに逆戻りした。
保田駅は1.3キロ先にある。

海岸沿いの道を保田駅に向かって歩いて行く。
ザックを背負い、カヤックを転がして1キロ以上歩くのは初めてかもしれない。
風が唸っている。


保田駅から宿のある富浦駅までは、たったの4駅。
ただ、この路線の駅はエレベータが付いていない。
プラットホームに行くまで、重い荷物を持って階段を上り下りしなければならないのはけっこう辛い。
お年寄りは電車に乗らないんだろうか?
富浦駅からもカヤックを引っぱり、やっと宿に到着した。

風呂に入ってビールを飲んでいると、いつの間にか風の音が止んでいた。
もしやっと思って、海岸に行ってみると、さっきまでとは違う海が広がっている。2時間早く始まった南西は、2時間早くおさまったらしい。
明日も一日このままでいてください。

(2日目につづく)