フォールディングカヤックの試練 〜子浦周辺〜

11月3日 文化の日。
今日は、自由と平和を愛し文化をすすめる日だ。
山か海かと迷った末、海で遊ぶことにした。明日からは風で海に出られない。
伊豆まで足を伸ばし、遊んだあとは美味い酒、美味いものを食べ、温泉で一泊して帰ってくる…という久しぶりのゴールデンプランだ。

入間到着予定は8時半…とワクワクしながら、車を走らせている時に、とんでもない事を思い出した。
11月4日は、カミさんとウォーキングに行く約束をしていた。
それも、普段はパートの仕事に出ている土曜日に休みまで取っている。
昨日「明日は泊まってくるよ」と話した時に、「ふ〜ん泊まってくるんだ」と受け流された会話が、今思うと不気味である。
カミさんが起きた頃を見計らって、恐る恐る電話をかけてみた。

「明日、ウォーキングの約束してたの忘れてた! 今日は日帰りします!」
「いいよ、別に泊まってきても」
ふむ…口調は優しいが、騙されてはいけない。
「いや、帰ります!!」
ふ〜…文化の日ではあるけど、あまり自由ではないようだ。

予定通り、入間に到着。
今日は、奥石廊をのんびり散策し、帰り際に富戸の浜に寄る。

伊豆 入間海岸昨日までの涼しさは何処へやら、短パンに半袖でもジンワリと汗をかくほど今日は暑い。
後はシートを取り付ければ完成…という時に、原付に乗った1人の男性がやって来た。

「あの〜、ここカヌー禁止になったんですよ。」
「えっ?いつからですか?」
「今年の夏からなんです。せっかく組み立てたのにすみません。」
「何かあったんですか?」
「え〜いろいろとあって…」
「わかりました。すぐに片付けます。」

何があったかはわからないけど、南伊豆の入り口として気に入っていた入間は使えなくなってしまった。
単に出艇に使えないというだけでなく、休憩するための上陸地として使うのもNGである。
分解していると、地元のおばあさんが通りかかった。

「今日はいい天気でよかったわねぇ。どこまで行くの?」
「いえ、この場所はカヌーが禁止になったみたいなので、今片付けているところなんです。」
「え〜そうなのぉ?何かあったのかしら?じゃあ妻良に行かないとだめ?」
「そうですねぇ…中木もカヌー禁止なので、これからこの辺りに来るカヤッカーは少し危険かもしれないですね。」

中木や雲見も使えない今、奥石廊を散策するには、弓ヶ浜か本瀬を出て石廊崎を超えるか、子浦から出るしかない。
ちなみに、弓ヶ浜や子浦から出る場合は片道10キロくらいあるので、出艇場所に戻るとなると "奥石廊をのんびり" というわけには行かないだろう。
奥石廊への近道

ほとんど組み立てが終わったカヤックを、海に浮かべないまま分解することの虚しさは、フォールディングカヤッカーにしかわからない。
まして今日は日帰り。
このあと別の場所に移動して、もう一度カヤックを組み立てて…と想像すると、一気にテンションがダウンしてしまった。
川奈でステーキでも食べて帰ろっかなぁ…などと思ってはみたものの、せっかくここまで来たのに何もしないで帰るのは勿体無い!!
子浦に向かうことにした。

妻良 柱状節理妻良子浦で今日二度目の組み立てをして、海に浮かんだ。
一旦浮かんでしまえば、さっきまでのモヤモヤは何処へやら。
一気にテンションがアップし、目的地を富戸の浜に定めて漕ぎ始めた。
しかし、キャンプの時しか使わない富戸の浜がなぜ目的地なのか?
この連休で、キッカーが妻良から南伊豆遊歩道を歩いて、富戸の浜でキャンプすると聞いていたので、そこに差し入れを持って行きたいだけである。

妻良妻良釣り人を避けながら、岸ベタを進む。
左手に谷川浜(やがわはま)を見ながら二十六夜山の西側に回り込むと、思ったよりも向かい風が強く吹いていた。
ちなみに、以前砂浜だった谷川浜は年々ゴロタ化が進んでいる。

富戸の浜富戸の浜に到着。
持って来た差し入れを川に入れた。

二十六夜山二十六夜山そこら中の岩場に釣り人が張り付いている。
ピッチの早いウネリと反射波で、この辺りには変な三角波が立っていて、渡し船への乗り降りも大変そうだ。
カヤックも上下左右に揺さぶられている。

妻良ウネリの入らない山陰に入って一息。
この900メートル先にある、海食洞を抜ければ、谷川浜に出る。

妻良 海食洞波に押されながら海食洞に入り、岩壁にパドルをぶつけないように注意しながら狭い出口を抜ける。
谷川浜も夏場はたくさんの海水浴客が渡し船でやって来るので、カヤックでの上陸は禁止。
また、夏場じゃなくてもカヤックは快く思われていないので、キャンプはしない方がいい。
ここまでくれば妻良湾は目の前なので、ほとんど安全圏なのだが、6年前に谷川浜で遊んでいた時には、ものの10〜15分で風が10メートル以上に上がったことがある。
楽園は近くにあった

妻良妻良妻良往路では水深が足りずに通れなかった "ワンチャンポイント" を抜ける。
カヤックの下をソラスズメダイが舞っている。

妻良 海食洞妻良粟島の鳥居岩より立派な無名の門をくぐりながら、妻良湾の防波堤の中まで戻って来た。
この先は、釣り人を乗せて帰って来る渡し船に注意しながら湾を横断すれば子浦だ。

子浦子浦に上陸し、カヤックから荷物を出していると、地元のアウトフィッターが台風で汚れた浜の掃除をしていた。

「ご苦労様です。ひどかった台風は21号ですか?」
「はい、21号の時がすごかったですね。向こうにあった草木が根こそぎ持って行かれて、防波堤も少し壊れたみたいです。でも、いい事もあって、この辺りはゴロタだったんですが、砂浜になりました。どこから来たんですか?」
「横浜からです。最初入間に行ったんですが、入間はカヌーが禁止になったのでこっちに来ました。使えない浜が増えて悲しいです。」
「そうですねぇ、ほんとは使える浜を増やしたいんですけどね。」
「この時期は駐車場もガラガラですね?」
「混むのはお盆の時くらいですよ。」

子浦子浦での撤収は快適。そして子浦は優しい。
後は頑張って家まで4時間の道を帰るだけ。いや川奈でステーキを食べるから5時間だ。

map_20171103.jpg