雨女の底力 〜大菩薩嶺〜

私は雨男と言われたことはない。
しかしそれは当たり前である。
なぜなら、私は確実に天気のいい日を選んで遊びに出かけているので、雨が降る確率が低いからだ。
当日の早朝に天気予報を確認して最終決定をすることなど、あたり前田のクラッカーである。
しかし、世の中には「今日は雨の心配はありません」という天気予報の連呼を物ともせず雨にしてしまう、本物の「雨男」「雨女」がいる。
これは、その "本物の雨女" と出かけた時の記録である。

ちなみに、世の中には変わった団体があるもので「日本雨女雨男協会」というのがある。
WEBサイトを見るとこう書いてある「現在では全国各地…250名以上の雨女雨男たちが活動しています。」
毎日活躍しているんだろうか?
できればこの方達には普段はおとなしくしていただき、日照りが続いた時のみ頑張ってもらいたいものである。


10月14日、幼馴染みのユキちゃんとその友達で紅葉の山歩きに行くことになっていた。
何度天気予報をチェックしても、"この日は絶対に雨が降りません!!" という自信満々の予報がされていた。
この日は間違いなく晴れる!!
当日の朝、我々が向かう山域の天気予報を見ても、晴れマークがズラ〜っと並んでいる。
しかし、その時点ですっかり忘れていた事があった。
今回のメンバーの中には "本物の雨女" がいるってことを…。

女性陣二人をピックアップし、早朝の中央高速を走っている。
山は雲と霧でかすみ何も見えないばかりか、雨が降り始めた。
後ろの席に座った "本物の雨女" は、私は雨女ではないと言い張っているが、むかし天気のいい日に富士山を見に行ったら土砂降りになった…などと思い出話しをしている。
言っておくが、それは "雨女の自慢話" にしか聞こえない。

「雨だったら中止ですね。」
「笹子トンネルを境に天気が変わることがあるので、それに期待しましょう。」
そして、長い笹子トンネルに入りトンネルの出口が見えてきて…抜けた…なんと!!トンネルを抜けると青空が広がり、周りの山々もクッキリ見えている。
「すごい!!」
同乗者は大騒ぎである。

IMG_9736.jpg登山口に到着。
快晴である。
迷う事なく準備を整え、記念写真を撮って出発。

ところが…

登り始めると森にはガスがかかり、遠くの山々は全く見えない。
福ちゃん荘を過ぎ、富士山や大菩薩湖がど〜んと見渡せる場所に着いても真っ白い世界が広がっているだけ。
それどころか雨が降ってきた。
所々ぬかるんでいる道が歩きづらそうだったので、女性陣に私のトレッキングポールを一本づつ貸してあげた。
「ぬかるみに突くと先っぽのキャップが取れちゃうので、気をつけてね」

雨の中、雷岩から眺望ゼロの大菩薩嶺の山頂へ行き三角点にタッチ。
とりあえず、女性陣は百名山の一座に登頂。
山頂から雷岩へ戻る途中「あ〜〜っ」という悲鳴にも似た声が後ろから聞こえた。
「気をつけてねって言われていたのに、キャップが取れちゃいましたぁ〜」
と言いながら、取れちゃっただろう場所を探している。
「見つけました!!」
なかなかの責任感である。

IMG_9741.jpgIMG_9742_20221014.jpg大菩薩峠に向かって歩く。
眺望ゼロなのに、何を指差して見ているのだろうか?(^^;

すれ違う人達に「あいにくの天気でぇ」と声をかけると、どの人も苦笑いを浮かべて挨拶を返してくる。
まさか、我々のパーティの中に "本物の雨女" がいるなんてことはこれっぽっちも思っていないだろう。

雨が強くなってきた。
雨女疑惑がかけられている1名は、初めての山登りってことで背負っているリュックはズック生地。
このままでは中に雨が染みてしまうので、リュックカバーを貸してあげた。
これで、私からのレンタル品はパーカー(1万円)、トレッキングポール(1万円)、リュックカバー(1万円)の3点(3万円)になった。

DSC_0053.jpg昼飯場所に考えていた介山荘に着いても、雨は降り続いている。
というか、この辺りは風も抜けていて、なんだか寒い。
寒がっている女性陣には、介山荘の茶屋でしょうが湯を飲みながら温まってもらい、私は風裏を探して昼飯のラーメン作りに取りかかった。
ワカメ、玉子、焼豚、ネギが入った棒ラーメンが出来上がり、茶屋に出前した。
至れり尽くせりである。

IMG_9743_20221014.jpg体も温まったので、ここから下山する。
大菩薩峠から福ちゃん荘に続く道は、凸凹がないお気楽なハイキングコース。
福ちゃん荘からも舗装の道を歩き、無事ロッジ長兵衛まで下りてこられた。

DSC_0060.jpgところが下山した途端、青空が顔を出し陽がさしてきた。
ふむ…山の上だけ天気が悪かった…と思うことにしよう。
悔しいので、上で食べようと思っていたデザートを作ることにした。
焼き林檎のマスカルポーネ添え。
お皿は、ユキちゃんが何も考えずにリュックに入れてきたもので、デザートにピッタリ!!

帰りは、日帰り温泉に入ってさっぱりし、朝ピックアップした場所まで二人を送り届けて解散。
天気は思い通りにならなかったけど、ポジティブ思考な人達との山歩きは楽しい。

IMG_9748.jpgで、私はお決まりの一人打ち上げ。
炙りしめ鯖の後は、もつ鍋で日本酒を堪能。
長い一日が終わった。