坂本龍一さん逝去

2023年3月28日、坂本龍一さんが亡くなった。
71歳だった。
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sakamotoryuichi.jpg©2022 Kab Inc. / Kab America Inc.

最初にがん(中咽頭がん)が見つかったのは、2014年。
放射線治療で回復したが、2020年に今度は直腸がんが見つかった。
大腸の切除を含む6度の手術を受けたにも関わらず、肺などにも転移した。
昨年の7月から「新潮」で連載を始めた。
タイトルは「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」である。
終わりの見えない病魔と闘いながら、精力的に活動を続けていたものの、ついにその時が来てしまった。

坂本龍一さんは、音楽活動の時間を割いて反原発や自然保護活動も行なっていた。
亡くなる少し前、3月15日に東京新聞へ寄せたメッセージ。
---メッセージ全文---
2011年の原発事故から12年、人々の記憶は薄れているかもしれないけれど、いつまでたっても原発は危険だ。
いやむしろ時間が経てば経つほど危険性は増す。
コンクリートの劣化、人為的ミスの可能性の増大、他国からのテロやミサイル攻撃の可能性など。
なぜこの国を運営する人たちはこれほどまでに原発に固執するのだろう。
ロシアによるエネルギー危機を契機にヨーロッパの国々では一時的に化石燃料に依存しながらも、持続可能エネルギーへの投資が飛躍的に伸びているというのに。
わが国では、なぜ未完成で最も危険な発電方法を推進しようとするのか分からない。
発電によってうまれる放射性廃棄物の処理の仕方が未解決で増えるばかり。
埋める場所もない。
事故の汚染水・処理水も増えるばかり。事故のリスクはこれからも続く。
それなのに何かいいことがあるのだろうか。
世界一の地震国で国民を危険にさらし、自分たちの首もしめるというのに、そこまで執着するのはなぜだろう。
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「なぜ なぜ なぜ」

もう一つは、今年の2月24日。
神宮外苑の樹木伐採について、小池百合子都知事、文部科学相、文化庁長官、新宿区長、港区長宛に、再開発の見直しを求める手紙を送った。
---手紙全文---
東京都都知事 小池百合子様
 突然のお手紙、失礼します。私は音楽家の坂本龍一です。神宮外苑の再開発について私の考えをお伝えしたく筆をとりました。どうかご一読ください。
率直に言って、目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません。これらの樹々はどんな人にも恩恵をもたらしますが、開発によって恩恵を得るのは一握りの富裕層にしか過ぎません。この樹々は一度失ったら二度と取り戻すことができない自然です。
 私が住むニューヨークでは、2007年、当時のブルームバーグ市長が市内に100万本の木を植えるというプロジェクトをスタートさせました。環境面や心の健康への配慮、社会正義、そして何より未来のためであるとの目標をかかげてのこと、慧眼です。NY市に追随するように、ボストンやLAなどのアメリカの大都市や中規模都市でも植林キャンペーンが進んでいます。
 いま世界はSDGsを推進していますが、神宮外苑の開発はとても持続可能なものとは言えません。持続可能であらんとするなら、これらの樹々を私たちが未来の子供達へと手渡せるよう、現在進められている神宮外苑地区再開発計画を中断し、計画を見直すべきです。
 東京を「都市と自然の聖地」と位置づけ、そのゴールに向け政治主導をすることこそ、世界の称賛を得るのではないでしょうか。そして、神宮外苑を未来永劫守るためにも、むしろこの機会に神宮外苑を日本の名勝として指定していただくことを謹んでお願いしたく存じます。
 あなたのリーダーシップに期待します。
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「神宮外苑開発は中断を」
小池百合子都知事は、このメッセージを無視した。
この2つの声は、死期を悟った中、最後に振り絞ったメッセージだったような気がする。

知らなかったのは、2007年に「more trees(モア・トゥリーズ)」という森林保全団体を設立していたこと。
https://www.more-trees.org/
2007年といったら坂本さんが56才の時。
その頃から、気候変動や生物多様性の危機を感じ、豊かな森を未来へ残したいと思って行動を起こしていたなんて…心の底から尊敬する。
私は、毎月細々と行なっている寄付先を見直し「more trees」を加えることにした。


YMO時代のテクノミュージックは新しいなぁとは思ったけど、それほど興味はなかった。
しかし、映画音楽を手がけるようになってからは、物語性のあるその音楽が好きだった。


Merry Christmas Mr. Lawrence(1983年)


The Revenant Main Theme(2016年)

最後に「energy flow」でお別れです。
安らかに…

energy flow(1999年)