Liberty MediaとFIAの功罪

現在、F1の商業権を持つのは「リバティメディア -Liberty Media-」という米国の企業である。
2016年に、英国の「CVC キャピタル・パートナーズ」からF1の株式を買取し、F1の運営や放映を管理している。
昔は "良くも悪くも" 独裁的なバーニー・エクレストン(現在92歳)が全てを仕切っていたが、"良くも悪くも" 民主的な体制に変わったとも言える。
f1logo.jpgリバティメディアのものになったF1の新しいロゴマークが、完全にスリーエム社(3M)の製品ロゴのパクりだというのは置いておいて、最も大きく変わったのは、F1のプロモーション方法である。
3M vs Formula I Logo Fight …What’s All The ‘F’uss About?(外部サイト)

わかりやすのは、2019年からNETFLIXでの配信が始まった「フォーミュラ1: 栄光のグランプリ -Formula 1: Drive to Survive-」。
フォーミュラ1: 栄光のグランプリ
このコンテンツは、前年のシーズン(2018年シーズン)に起こった様々なトピックをドラマチックに仕立てたドキュメンタリーで、ドライバーやチーム運営者の会話やインタビューに加え、パドックでのちょっとした言動やプライベートの映像を挟むことで、それまでF1をよく知らなかった人達に興味を持たせることに成功した。
編集については、"誇張されている" という見方をする関係者もいるが、これによってファン層が拡大し、アメリカからのスポンサーが増えたのは確かである。
アメリカでの人気が拡大したことを受け、それまでアメリカで開催されるグランプリは「アメリカGP」だけだったものが、2023年シーズンは「マイアミGP」「アメリカGP」「ラスベガスGP」の3大会になった。

さて、ここからが本題である。
私が思った問題点を書く前に、まずは、FIA(国際自動車連盟)リバティメディアの関係を整理してみようと思う。
ここは、例によって「ChatGPT」の出番である。
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FIAとリバティメディアは、F1を運営する上で重要な役割を果たしている2つの団体です。
FIAは、F1を含む多くのモータースポーツの国際的な規制機関であり、レースルールの策定や安全規定の管理など、多岐にわたる業務を担当しています。FIAは、F1のワールドチャンピオンシップに認定を与え、毎年F1のレーススケジュールを公表しています。
一方、リバティメディアは、2017年にF1の運営権を取得したアメリカのメディア企業です。F1の運営において、リバティメディアはブランドのプロモーションや収益の最大化など、ビジネス面に関する業務を担当しています。具体的には、テレビ中継やスポンサー契約の締結などが挙げられます。
FIAとリバティメディアは、それぞれの役割に応じて、F1を運営しています。FIAはスポーツのルールや安全性に関する問題に対処し、リバティメディアはビジネス面の運営に取り組んでいます。
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問題1:レース数の増加
 上記説明のように、レーススケジュールを決め公表しているのはFIAだけど、リバティメディアの意向が大きく影響している。
2023年シーズンは23戦である。
1970年代は年間14戦前後、1980〜1990年代は年間16戦前後だったが、2000年代に入ると少しづつ増加し2017年は20戦だった。
レース数の増加はリバティメディアに変わる前からの傾向であるが、年間23戦と言うのは、あまりにも多いと感じる。
アメリカでの開催が年間3戦というのもピンとこない。
そもそもグランプリというのは、1国1開催がいいと思っているので、パシフィックGP(日本)とかヨーロッパGPと称して、1国で2開催する時から違和感があった。
個人的には年間18戦くらいがいいと思う。

問題2:スプリント予選レース
 レースフォーマットを決めているのもFIAだけど、これについてもリバティメディアの意向が大きく影響していると思う。
スプリント予選とは、決勝レースの前に行われるレースで、これによりにより決勝レースのグリッドが決まる。
2021年のイギリスGPで初めて実施され、2023年は、6つのグランプリでスプリント予選が行われる。
グランプリ期間中に "レース" を2回行うことで、"よりエンターテインメント性を持たせる"…というのが導入の理由らしい。
スプリント予選が開催されるグランプリではレースフォーマットが変更される。
[通常のレースフォーマット]
 フリープラクティス1回目
 フリープラクティス2回目
 フリープラクティス3回目
 予選(Q1、Q2、Q3)
 決勝レース
[スプリント予選開催時のレースフォーマット]
 フリープラクティス1回目
 スプリント予選(Q1、Q2、Q3)
 フリープラクティス2回目
 スプリント予選レース
 決勝レース
マックス・フェルスタッペンが「F1が今後もスプリントを増やすなら(F1に)長くはいられない。」と語っているように、個人的には、スプリント予選のフォーマットは "愚" だと思っている。
こんなことをしていたら、グランプリレースとしての格式は無くなってしまう。
グランプリレースは、それぞれのチームとドライバーがレースに向かってマシンの調整を行い、最高の状態でレースに挑む…という形でなければならない。
また、現在も燻り続けている「リバースグリッドによるスプリントレース」案など "愚の骨頂" であるのは言うまでもない。
F1に限らず、どんなレースであってもリバースグリッドは必要ない。

(あとがき:2023-4-21)
スプリントの開催時のレースフォーマットが変更されることになった。
 フリープラクティス1回目
 決勝レース予選(Q1、Q2、Q3)
 スプリントレース予選
 スプリントレース
 決勝レース

問題3:トラックリミット違反
 現在のレギュレーションで「つまらない」と思うものの一つである。
トラックリミット違反とは、コースの両端に引かれている白線から4つのタイヤが出た場合にペナルティを科せられることである。
具体的にはこう。
予選でトラックリミット違反をすると、その周のタイムが抹消される。
決勝レースでトラックリミット違反をすると、それによって得られたアドバンテージを返したり、違反が複数回におよんだ場合はドライブスルーペナルティやタイムペナルティなどが科せられる。
はっきり言って昔はなかった。
なぜならコースの外はグラベルや芝生や壁だったので、コースから外れると"損"をするからである。
現代のコースは、安全性を優先したのか、コース外がコンクリートになっている所が多い。
これが間違いである。
先日行われたオーストラリアGPのアルバート・パーク・サーキットや鈴鹿のように、安全性を考慮しながら「コース外に出ると損する」コースに戻せば、トラックリミット違反などという馬鹿げたペナルティは必要なくなる。

問題4:タイヤルール
 これも「つまらない」と思うものの一つである。
ピレリが供給するタイヤがヘボかどうかは置いておいて、決勝レースでは1回以上のタイヤ交換が義務付けられ、硬さの異なる2種類以上のタイヤを使わなければならない…というルールである。
これでは戦略の幅が狭くなってしまい、面白くない。
もっと自由にタイヤを使えるようにすべきだと思う。
そもそも、必ず1回はピットインさせるというのは、"よりエンターテインメント性を持たせる" 為に作られたルールである。
レースとは、同時にスタートして誰が一番先にゴールするかを決める単純なものなので、タイヤ交換をするかどうか…どのタイヤを使うかなどは、すべてチーム戦略の範疇にした方が意外性があっていいと思う。

問題5:細かいペナルティ
 今のF1は、あまりにも細かいルールが多いため、レースディレクターが勝敗を左右するレースが頻繁にある。
レースは、チームとドライバーによって勝敗が決すべきものなので、これは良くない。
昔なら「レーシングアクシデント」で片付けられていたものが、今はインシデントとして審議され、どちらかにペナルティが科せられることが多い。
あきらかに違反のある場合を除き、多くは「レーシングアクシデント」として不問にしていいケースが沢山あると思う。
また、マシンが破損した時に出されるオレンジボールも、多用しすぎだと思う。
これについても、昔のように、あきらかに危険な場合のみオレンジボールを掲示すべきだと思う。


それ以外にも「マシンが重くなり過ぎ」など、上げればもっともっといろいろ不満がある。
個人的には、"よりエンターテインメント性を持たせる" という考え方そのものが邪魔だと思う。
真のエンターテインメントとは、故意に作られた「混乱」や「罠」ではなく、レースに参加しているチームとドライバーの情熱でもたらされるものだと思う。
"不要なルール" はいらない。
リバティメディアとFIAが、F1の将来をどのように考えているかはわからないけど、一度初心に立ち返えり「世界最高峰のレース」の在り方を再考してもらいたい。