無理やりワンウェイ 奥能登2日目〜木ノ浦海岸から珠洲〜

IMG_1461.jpg2日目の朝4時半、道路脇に置いてある車に行ってみると、私の車以外に3台の車があった。
どうも、この辺りではクロダイが釣れるらしい。
ウインナーソーセージ&エッグとパンで朝食を済ませ、本日の出艇地に向けて出発。

IMG_1468.jpg大谷川の河口には、たくさんの鯉のぼりが泳いでいる。
昨日、民宿から垂水の滝パーキングに向かう途中でもココを通り、感じのいい女性店主がいる大谷スーパーさんで冷えたビールを購入した。

IMG_1471.jpgIMG_1472.jpg本日の出艇地である、木ノ浦海岸(きのうらかいがん)に到着。
この海岸は公園にもなっているので、トイレもあって快適。
ルーフからカヤックを下ろし、着替えをしたら準備完了。

IMG_1473.jpg予想に反して穏やかな海が広がっている。
今日はキャンプ道具を持つ必要がないので、荷物はデイツーリングと同じ。

P5040019_20230504.jpg海藻の森の上を飛ぶような感覚。
森では若々しい新緑が芽吹いているけど、海の中も同じ?

P5040020.jpgP5040021_20230504.jpg岩礁帯を行く。
岩礁帯を抜けた所では、駐車場で少し話した男性がタコを狙っていた。

P5040022.jpgP5040027.jpgマップを見て禄剛崎(ろっこうさき)の場所を確認する。
この後、小さな岬を3つ越えた先が禄剛崎らしい。

P5040029.jpg禄剛崎の手前でスポンソンに手を当ててみたら、少し空気が少ない。
上陸して空気を入れようかな…と岸に近づいてはみたものの、上陸するにはちょっと面倒くさそうな海岸だったので、このまま行くことにした。

P5040035.jpgP5040045_20230504.jpgなんとも呆気なく禄剛埼灯台を通過。
ちなみに、この灯台の近くには「日本列島ここが中心」の碑がある。
国土地理院が定めた「日本の重心」は、富山県沖の日本海にある。
"重心" という字が示すとおり、これは "日本を平面と見なした国土の質量中心を計算によって求めたもの" とのことなんだけど、海の上に日本の重心があってもつまらないので、重心点にもっとも近い陸地である禄剛埼を「日本列島ここが中心」としたらしい。
まぁ観光的に利用できるキャッチフレーズってわけだけど、"重心" ではなく "中心" と書いた稗を立てているのがちょっとかわいい。
また、この岬は「海から昇る朝日と海に沈む夕陽が同じ場所でみれることで有名」とのことだけど、そういった岬はここ以外にもあるので、これまた観光客向けのキャッチフレーズということなんだろう。

P5040056_20230504.jpg前方に見える岬は、能登双見(のとふたみ)。
珠洲岬は、その先にある。

P5040060.jpgP5040061.jpg海水の透明度が凄すぎる。
この少し先の岩礁の上に何かの祠(ほこら)がある。
祠に向かって数段の階段があるけど…、この場所は気軽にお参りできる場所ではない。
Wikipediaによると、祠とは、神を祀る小規模な殿舎で、語源は神道用語の「ほくら(神庫、宝倉)」からきているらしい。
また、祠のある場所は集落の入口や道の辻、三叉路、水田や畑などの農地など、人間の生活圏の内部が多いが、山の神のように奥深い山奥や海岸の絶壁の側面など人間が立ち入らないような場所に祀られるものには神道的な自然崇拝を偲ばせるものもある…とも書いてあった。
ということは、この祠にも何らかの神物が収められているんだろうか?
ちなみに、この場所の崖を上がったところには道路が通っていて、「地蔵堂」という小さな祠がある。
こちらの祠が狼煙(のろし)の集落を守るための本来の祠で、海岸にあるこの祠は狼煙の港を守る為に置かれたもののように思う。
この祠の場所(Googleマップ)

P5040066.jpgP5040067.jpg能登双見を回り込む。
岩肌は、海鳥達のフンで真っ白。

P5040070.jpg珠洲岬(金剛崎)にやってきた。
何気なく撮ったパドルの先にある建物が「ランプの宿」だというのは後から知った。
とても有名らしいが、その手の宿には縁がない(興味がない)私は、全く知らなかった。

P5040074.jpg珠洲岬は観光地のようで、たくさんの人が歩いている。
岬にある水路には全て入ってみたけど、全体的に小規模な岬だった。
そして、ジグザグの道を下った先にある青の洞窟を外から見ると、中には青いライトが点いていた…ひょっとして無理やり青い空間にしているの?
"日本三大パワースポットの一つ" とか "聖域の岬" と呼ばれているらしいけど、まぁ言ってみれば、どこにでもある "普通の岬" のように見える。
しかし、それは私が静かな海の上にいたからかもしれない。
シケの日に大枚をはたいてランプの宿で一晩過ごせば、この場所のパワーを存分に感じられる!!…に違いない。

P5040076.jpg青の洞窟からバウを反転させ、旅を続けることにする。

P5040081.jpg少し進むと、来てみたかった寺家上野(じけうえの)の浜があった。
ちょっとした嵐が来たら、あっという間に壊れそうな舟小屋がいくつかあり、置いてある舟を見ると現役で使われているようだ。
舟小屋の後ろには住居がある。

P5040087.jpg穏やかで優しい海が続く。

P5040102.jpeg圧倒的に美しい粟津海岸(あわづかいがん)を行く。
この海の色と同じような所は…慶良間のニシハマビーチとか沖縄本島のホワイトビーチだろうか…。
上陸して昼飯にする。

IMG_1474.jpegIMG_1476.jpgコッヘルを忘れてきたので、シェラカップでリフィルのカップヌードルを作る。
いつもスープが飲みきれないので、これはこれであり。

P5040104_20230504.jpg今回のルートで初めて西にバウを向けて進み、珠洲市街の海岸に到着。
この後、民宿くにまつに預けてあった自転車にカヤックウェアでまたがり、木ノ浦海岸に置いた車を取りに行った。
距離はたったの14キロだけど、累積標高は235メートル。
当然、シングルスピードのDAHONでは登り坂を漕ぎ続けることはできず、ところどころで自転車を押して歩いた。

IMG_1478.jpeg無事車を回収し、ようやく宿にチェックイン。
遠征直前に宿を予約したため、狭い部屋でもかまわないという条件で、何とか泊めてもらえることになった。
ただし、夕食は付かない。
たまたま空いていたお風呂で汗を流し、打ち上げ飲みの準備完了。
宿の人に街のマップをもらいがてら、お勧めの店を聞いた。
2軒聞いた内の一つは、既に予約で満席とのことでNG。
もう1軒の店の電話番号と開店時間をマップ見ると、なんとこの時間(17時前)からやっている!!
電話をかける…出ない…少し時間をおいてもう一度電話をかける…出ない。
休みなんだろうか…と思った矢先、知らない携帯電話から着信があった。
「ごめんなさいね、電話いただいたのに出れなくて。」
「今日は店やってますか?」
「あっ来てくれる?開けて待ってるね。ありがとう。」
ふむ、マップでは店は16時からって書いてあるけど、まだ開店してなかったのかな?
とにもかくにも店は決まった。
宿の人に出かける旨挨拶。
「とんきさんが空いてたので行ってきます。」
「あ〜よかった、この前行ったお客さんも喜んでいたから楽しんで来て。」

IMG_1485_20230504.jpg店にはのれんがかかっていた。
「ごめんなさい。ガイドマップに16時開店って書いてあったのでてっきりもう開いているかと思っちゃいました。17時からなんですか?」
「開店時間は決めてないのよ〜」
どうやら、なかなかアバウトな店のようだ。
「サヨリがあるけど食べる?」
もらったサヨリを焼き始める。
「ワタのついたイカがあるけど食べる?」
もらったイカも焼き始める。
「イカはすぐに焼けるからね。」

90才の女店主は、カウンターごしに目の前に座り、身の上話を始めた。
「え〜と、ビールください。」
やっと、ビールにありつけた。
「日本酒は飲む?」
「はい、好きです。」
「じゃあ地元のお酒を2本置いとくから適当にやってね。」
と言ってグラスも2つ置かれた。
せっかくなので、両方のグラスにお酒を注いで味見してみる。
「お酒もらいますよっ、いいですかぁ、ちゃんと伝票に付けといてくださいね。」
その後、ホルモンやカルビをもらいながらお酒をいただく。
その度に
「お酒もらいますよっ、ちゃんと伝票に付けといてくださいね。」
と念を押す。

1時間くらい過ぎたあたりから、お客さんが入り出した。
最終的には、私を含めて12人の客を90才のおばあが1人でテキパキとさばいている。
私の隣には、一番最後に来店した女性客が座った。
なんと、同じ民宿に泊まってる人で、自分と同じように宿の人に紹介されて来たらしい。

21時をまわり、そろそろ眠たくなってきた。
会計は5,000円ピッタリ。
ビールとか焼き肉などは伝票に付けているような気がするけど、それ以外に出てきた魚や筍ご飯には値段がないはず。
たぶん、客がいた時間によって適当に金額を決めているっぽい。(^^
わたくし、けっこうそういうスタイルの店好きです。
お金を払っているとおばあが言った。
「筍ご飯のオニギリいる?」
「はい、欲しいです。」

長かった2日目も終了。
明日は五色ヶ浜海岸まで行き、奥能登最後の夜を楽しむ予定である。

(3日目につづく)