行けなかった店

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月8日に「5類感染症」へ移行し、季節性インフルエンザなどと同じ扱いになった。
日々の感染者数が発表されなくなったことで、国民は "以前の生活に戻った" と錯覚し、今まで遊べなかった鬱憤を晴らすかのようにどの観光地でも人出が爆発的に増えている。
その影響かどうかはわからないけど、感染者数は確実に増えており、ここ最近の神奈川県では1日に300人近くが感染している。
2020年4月に最初の非常事態宣言が出され、飲食店が軒並み営業を自粛した時の日々の感染者数は50人以下だった。
見えない敵というのは困ったもので、コロナ禍の我々にできることは、敵がいそうな所から離れることだけ。

ずっと行っていない店がある。
その店は、開店と同時に入らなければならない立ち飲み大衆居酒屋の人気店で、コロナ前は月に2〜3度行っていた。
感染状況は、2020年4月の非常事態宣言下の何倍も悪いけど、思い切って3年以上ぶりに行ってみることにした。

IMG_1765.jpeg開店時間を忘れていて、店の前に着いた時にはすでに暖簾が出ていた。
ガラガラっと横開きの扉を開けて中を覗くと、いつもの席(というかカウンターの場所)が空いていたので、迷わずその場所に陣取る。
「飲み物は?」
「ラガー小瓶で」
さっと、目の前にコップと小瓶が置かれた。
「つまみは?」
「今日、本マグロはあります?」
「ごめん、今日はない」
「カツオください」
「皮つき?皮なし?」
「なしで、ニンニクもお願いします」
やり取りが懐かしい。

追加で注文したポテトフライが食べ終わったので、アコウダイ(焼き魚)を注文する。
これも懐かしい。
店の人は、私がわかっただろうか?
私は、基本的に店の人に話しかけることはしない。
この3年間のことはとても気になったけど、この日も話しかけなかった。
話しは聞けなくても、以前と同じ人達がカウンターの中で動いているのを見れただけで嬉しかった。
ただ、暗算で会計をしてくれていた若い人の顔が見えず、会計はご主人がペンを持って計算していた。

お客さんの入りは、終始半分より少ない感じだった。
店の中に話し声が溢れていたらどうしよう…と少しだけ心配していたけど、隣にいた2人組の小さな話し声が聞こえるだけで、他の1人客は黙々と食べ、そして飲んでいる。
ご馳走様でした!!
また寄ります。