どっちがいいの? 那須岳1日目〜三斗小屋温泉(煙草屋旅館)〜

三斗小屋温泉(さんどごやおんせん)は、栃木県那須連山に囲まれた山の中にある温泉。
道路が通っていないその温泉のお湯に浸かるには、最低でも2時間の山歩きをしなければならない。
三斗温泉ではなく、なぜ三斗小屋温泉と呼ばれているかは "?" である。

wikipediaによると、明治時代は宿が5軒あったらしいが、現在は2軒だけ。
煙草屋旅館」と、少しだけ高級っぽい「大黒屋」。
片方には旅館という名前が付き、もう片方は旅館っぽい名前ではあるけど、どちらも基本は山小屋。
ただし部屋は個室のみなので、"山小屋風温泉宿" という呼び方が合っているように思う。

2018年に那須岳に行った時は、"下界" の民宿に泊まったけど、三斗小屋温泉のことはずっと気になっていた。
地獄と天国
灼熱地獄と化した酷暑日が続く毎日に嫌気がさし、少しでも涼しい所へ、そして、人の少ない所に行きたいと思った。

IMG_2392.jpeg8月25日 土曜日、那須ロープウェイ下の駐車場に一番乗りして、始発のロープウェイに乗った。
着いた所は "空の上"。
遥か彼方まで雲の海が広がっている。

今日は三斗小屋温泉の煙草屋旅館に泊まる。
煙草屋旅館にするか大黒屋にするかは、最後まで迷った。
WEBサイトのイメージは、煙草屋旅館が山小屋風(実際に"山小屋"と書いてある)で、大黒屋が旅館風("山岳温泉宿"と書いてある)。
宿泊料金は、一泊二食でそれぞれ11,000円と13,000円。
ある日は煙草屋旅館がいいかな…と思い、別の日に見ると大黒屋の方のがいいか…という感じで、なかなか難しい。
最終的には、素朴な感じと露天風呂がある煙草屋旅館に決めた。

ルートは、茶臼岳から三斗小屋温泉への分岐を2つ通り越してから標高1,916メートルの三本槍岳の頂上を踏み、熊見曽根の分岐まで取って返して1,465メートルの三斗小屋温泉へ下る。
コースタイムは、4時間50分。

IMG_2398.jpeg茶臼岳の頂上に着くと、沖縄事務所から緊急連絡が入った。
普段は "緊急" に対応しなくちゃならない事など皆無なのに、なぜかこういう日に限ってそうなる事がちょくちょくある。
シリアスな状況ならこのまま下山しなくちゃ…と思ったものの、電話で確認した状況ではノー問題。
対応方法を指示してなんとかなった。

200メートル下には、これから向かう避難小屋が見える。

P8250006.jpegIMG_2403.jpeg見る方向によってダイナミックに景観が変わる那須連山の山歩きは楽しい。

P8250009.jpegだいぶ下りてきた。

P8250010.jpegP8250011.jpeg剣ヶ峰のトラバース。
後ろを振り返ると茶臼岳、前は朝日岳。

P8250013.jpegP8250015.jpeg朝日岳へ続くワイルドな道。

P8250018.jpeg何度も振り返ってしまう。

P8250020.jpeg朝日岳は見る方向によって姿を変える。

P8250024.jpeg先ほどまでの荒々しい景観から穏やかな景観に変わった。
この尾根を登り切った所に、熊見曽根の分岐がある。

P8250026.jpeg熊見曽根の分岐を過ぎ、眼下に清水平が広がった。
別の山に来たみたい。

北温泉の分岐を過ぎ、三本槍岳へ登り始めたところで、高山病のような症状が出てきた。
目の焦点が合わず力が出ない…。
標高は2,000メートル以下なのに、困ったものである。
道の脇にリュックを置いて、空身で山頂を目指した。

IMG_2407.jpeg標高1,917メートルの三本槍岳に登頂。
のっぺりとした山頂なのに、標高は茶臼岳より2メートル高く、那須連山の最高峰である。
那須高原ビジターセンターの情報によると、この場所で噴火が始まったのは30万年前。
その後、20万年前から10万年前のあいだで、朝日岳などの山が形成されたらしい。
見た目は朝日岳が火山らしけど、親玉がこののっぺりした三本槍岳ってのが面白い。
ちなみに、気象庁の情報によると、今でも西側斜面の噴気地帯(無間火口)の辺りで噴気を上げている茶臼岳が最後に噴火したのは、1963年11月の小規模な水蒸気噴火。
比較的大きなものは、同じく西側斜面で発生した1953年10月の水蒸気噴火で、南へ6キロにわたり灰を降らせたらしい。
マグマの噴出を伴った噴火は1408年から3年続いたもので、この時は死者も出ている。

IMG_2409.jpeg熊見曽根の分岐まで戻り、いよいよ三斗小屋温泉に向かう。
目の前を歩いていた男性と、トンボが飛び交う隠居倉のベンチで少し話をした。
「あれ? ひょっとしてリュックをデポしてたのは…」
「はい、私です(^^;」
今日の宿は、私と同じ煙草屋旅館とのこと。

IMG_2412.jpeg三斗小屋温泉まで残り600メートルの所に源泉があった。
ここからお湯を引いている。

IMG_2420.jpeg煙草屋旅館に到着。
受付を済ませ到着ビールをやる。
生ビールはなく、沢の水で冷やされた缶ビールもそれほど冷えてはいないけど、やはり美味い。

露天風呂の利用可能時間は13:00〜(翌)6:30まで。
その内、女性専用時間は、13:00〜14:00、15:30〜16:30、18:00〜19:00の3回。
勘違いしちゃいけないのは、女性専用時間以外が男性専用の時間ではないということ。
宿泊客の中に、肝の座った女性あるいは、仙人の域に達したオバサンがいた場合は、こちらが困ることになる。
とりあえず、陽が当たって暑そうな露天風呂は明日の早朝に入ることにして、内湯(共同浴場)に浸かることにした。
しかし、"共同浴場"という名前のとおり、こちらも男性専用の時間があるわけではない(^^;

IMG_2414.jpeg"運よく"貸切の共同浴場に浸かった後で、缶ビールをもう一杯。
宿の女性が作ったという数量限定の燻製を勧められたので、迷わず購入。
写真は、チーズを一切れ食べた後。

ビールと燻製がなくなると同時に太鼓が鳴った。
太鼓は食事の用意ができた合図である。
広間に置かれたお膳の上に、料理が並べられている。
食事をしながら、最後に山小屋の飯を食べたのはいつだったか考えてみた。
2015年8月のオーレン小屋が最後で、その前が2013年6月の尾瀬…っぽい。
なんとオーレン小屋では桜鍋(馬肉のすき焼き)が出た。

(2日目につづく)