風男の悲劇 〜屋我地島〜

二日目の朝
風、波とも昨日より強く、さすがに浮き輪を持った子供達も遊んでいない。
昨日と同じ場所を漕ぐ気はないので、予約の時には頼んでいなかった朝食をもらってテラスで食べ、海を眺めながら今日できる事を考えた。
これといったアイデアも浮かばないまま、コーヒーを3杯おかわりする。
スコールは相変わらず数十分おきにやってきて、海の音をかき消している。
チェックアウトの時間まで30分を切ったところで、とりあえず海モードのウェアに着替えた。

車で備瀬の方向へ向かい美ら海水族館に近づくと、駐車場の前に立った係の人が当然のことのように手招きしてくる。
沖縄では、今でもリゾートホテルがどんどんできていて、美ら海水族館の近くのホテルからツアー客が埋まる。
この辺りもホテルが立ち並び左手にあるはずの海が見えない。
そして、自分にとって最悪なのが備瀬集落の入り口に塀の様にそそり立つ「ホテルオリオンモトブリゾート&スパ」だ。
このホテルができた後は、備瀬から静かさと素朴さが失われてしまった様な気がする。
そして、何度も利用した「SHOWER TOILET」の前には、場違いな雰囲気のレストランができていた。

備瀬崎の海は静かだった。しかし、潮が濁っていそうだったのでスノーケルはやめた。
時計回りに今帰仁から古宇利島の方へ車を走らせている途中、ふと屋我地島なら一周できるかもしれない…と思いついた。
1年前は、古宇利島に渡ったところで風が吹き始め、ビーチサンダルで3時間歩いて出艇地まで戻るという試練を経験した “いわくつきの場所” だ。
二度あることは三度ある 〜古宇利島撤退〜

屋我地島前回と同じ奥武島(おうじま)の駐車場に車を停め、カップルの前を通って浜にカヤックを降ろした。
そして荷物を積み込み後ろを振り向くと、カップルは消えていた。
どうも私は目障りな存在だったらしい。

屋我地島出艇。
島の北側先端までは追い風が続く。
今日は、古宇利島には渡らずそのまま古宇利大橋の下を通ってワルミ海峡に入り、屋我地島を一周して “カヤックに乗ったまま” 出艇地へ戻る予定だ。
ただ海上は思ったよりも風が強い。
ワルミ海峡の中、そして海峡を抜けてからもこの調子で吹かれると…悪いイメージは考えず先に進むことにする。

屋我地島屋我地島 済井出ビーチ風に押されながら小島の間を抜け、済井出(すむいで)ビーチに出るとアカクラゲが多くなった。
写真では数匹しか写っていないが、実際は次から次にやってくる。
こんな所でひっくり返ったら大変だ。
クラゲをパドルですくい上げないように注意しながら漕いでいると、カヤックの下を丸い物体がスーっと通過した。
ウミガメだ。

前回と同じ、ビーチに張り出した港湾施設の辺りで休憩。
施設を右に見ながら水路を進み、日陰になっている橋の下に上陸してカヤックを引き上げた。
オニギリを一つ食べ、ペットボトルの水をたっぷり飲む。
この近くには自動販売機があるので、水は補給できる。
自動販売機に向かう途中で、お金を持ってきていない事に気がついた。
まずい!
残りの水は700ml程度。昨年より暑くないとはいえ、ちょっと(だいぶ?)心もとない。
仕方がないので、近くの民家のブザーを押した。
「すみません。旅の者なのですが水をいただけないでしょうか?」
「あっいいですよ。ちょっと待ってくださいね。」
空のペットボトルを差し出す前に、家の中に消えてしまった。
「これ良かったらどうぞ。1本で大丈夫ですか?」
「すみません、お金を持っていないんですが…」
「いいですいいです。」
「ありがとうございます! 命拾いしました。」
優しい人で良かった。

屋我地島無事水を補給し橋の下まで戻ると、カヤックを置いたはずの場所にカヤックが無い。
あれ?っと思って辺りを見回すと、10メートルくらい風下にカヤックがひっくり返っていた。
デッキバックの中に入れていたペットボトルとバナナも砂浜に転がっている。
ふむ…カヤックを置く時に風は気にしていたけど、カヤックが飛ばされるほどの突風が吹くとは思っていなかった。気をつけないと!!

屋我地島屋我地島 古宇利大橋スコールの中を進み、島の最北端を回り込むと古宇利大橋が見えた。

屋我地島 古宇利大橋屋我地島 古宇利大橋古宇利大橋は、屋我地島と古宇利島を結ぶ長さ約2キロの橋。
個人的には、このくらい離れた島は船で渡るもので、橋の上を車であっという間に渡っても “島感が無いのでは?” と思うけど、ここから見える海の色は素晴らしい。
車で渡ったとしても一見の価値がある。

屋我地島 ワルミ海峡ワルミ海峡に入り、運天港が見える浜に上陸。

屋我地島 ワルミ海峡屋我地島 アダンの実目の前を大型フェリーが相次いで入港し、引き波が浜に打ち寄せている。
ここで2個目のオニギリを食べて休憩する。

屋我地島 ワルミ海峡さて、ここからカヤックは南に向く。
カヤックで一周できるか、それとも歩く羽目になるかの別れめだ。

屋我地島 ワルミ海峡 ワルミ大橋はたして風は…吹いていた。
1キロを30分かけて進む。時速2キロ。
残りは6キロ、かかる時間は3時間、今は15時を回っている。予想到着時刻は18時。
撤退を決めた。

IMG_8154.jpgIMG_8157.jpg去年の歩き3時間から比べれば可愛いもので、今日は1時間20分の距離だ。
全く問題無し!!…と大いに強がってから歩き始めた。
当然今回はカヤックシューズのまま歩いている。
たぶん、内地の人間で最も屋我地島を歩いた人間は自分だろう。

屋我地島歩いて奥武島の出艇地に戻り、車で撤退地点まで戻って撤収した。
デッキバックをしまおうとした時、パドルリーシュが無いことに気がついた。…風でカヤックが飛ばされた時だ。
車でその場所に向かい、浜を探すと一発で見つかった。
ふ〜〜いろいろある。

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