奪われたタイトル

フォーミュラ・ワンで7度のシリーズチャンピオンになっているルイス・ハミルトンについては、過去何度かこのブログでも登場した。

2008年2月 ルイス・ハミルトンは若手No.1なのか?
 〜本当にルイスは天才で、若手No.1のドライバーなんだろうか?
2011年4月 これがフォーミュラ・ワンだ!
 〜優勝したルイス・ハミルトンは、いまいち好きなドライバーではない
2011年6月 大人ドライバー
 〜ルイス・ハミルトンは、子供ドライバー
2014年3月 走る実験室シリーズの開幕
 〜ルイス・ハミルトンがチャンピオンになると予想
2016年11月 ニコの悲願とルイスの行動
 〜ルイス・ハミルトンは、いまだに大人になりきっていない
2017年3月 2017年モータースポーツシーズン開幕
 〜チャンピオンになるのは、たぶんメルセデスのルイス・ハミルトン
2020年3月 2020年モータースポーツシーズン開幕…せず
 〜最終的にチャンピオンになるのはルイスで決まり
2020年9月 それぞれの優勝
 〜ルイス・ハミルトンも35歳。アグレッシブさはそのままに、素晴らしいドライバーに成長した。
2021年3月 2021年モータースポーツシーズン開幕
 〜ここ数年続いたメルセデスの独走は難しい

13才の時に、マクラーレンからサポートを受けるとニュースで報じられた時の事は、今でも覚えているし、いよいよこういう時代になったんだなぁと思った。
しかし、2007年にマクラーレンからデビューしてから2016年までの10年間は、特に好きなドライバーではなかった。
大人(年齢ではなく大人らしい振る舞い)のドライバーが好きだった私は、ハミルトンの子供じみた発言や態度が、あまり好きではなかったからだ。
しかし、そのハミルトンも今では37才。
今見るハミルトンのドライビングは、全ての面でパーフェクトだと思う。
ちなみに、私が言う "パーフェクト" とは、これまでのF1ドライバーの中で1番という意味ではなく、あくまでも現代F1の中にあってのもの。
時代が違うので、一度もシリーズチャンピオンを取れなかったジル・ヴィルヌーヴやルネ・アルヌー、そして過去のチャンピオンドライバーであるアイルトン・セナ・ダ・シルバやミハエル・シューマッハとは比べられない。

AbuDhabi2022-1.jpg

そして、2021年シーズン。
熾烈なチャンピオン争いを繰り広げてきたルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンの二人の獲得ポイントは、最終戦アブダビGPを迎えた時点で全く同じ。
最終戦のポイント次第でチャンピオンが決まる。
万が一、最終戦のポイントも同じだった場合は、優勝回数の多いマックスがチャンピオンになる。

そんな大一番のレースも熾烈な展開となったものの、58周レースの53周時点ではルイスが独走していて、マシンにトラブルが出ない限り、ルイスが2021年のチャンピオンになる確率は99%だった。
しかし、レースも残り5周となったところでニコラス・ラティフィがクラッシュ。
セーフティカーが導入された時点でマックスはソフトタイヤにチェンジ。このまま、セーフティカー先導のままチェッカーを迎える可能性もあったので、ルイスはタイヤ交換できずステイし、残り1周でグリーンフラッグが振られた。
この状態でのグリーンフラッグは特に問題はないが、問題なのはルイスとマックスの間にいたマシンの処理だ。
ルイスとマックスの間には、周回遅れのランド・ノリス、フェルナンド・アロンソ、エステバン・オコン、シャルル・ルクレール、セバスチャン・ベッテルの5台がいた。
そして、マックスの後ろには、ダニエル・リカルド、ランス・ストロール、ミック・シューマッハーがいた。
レースディレクターのマイケル・マシは、周回遅れのマシンを同一周回に戻すため、ルイスの後ろにいた5台をルイスの前に出したが、マックスの後ろのマシンは追い抜きを許されなかった。
これにより、ルイスの真後ろにマックスが続き、残り1周でグリーンフラッグ。
マックスのタイヤは替えたばかりのソフトタイヤなので、ルイスは抵抗できずレースとチャンピオンの座を失った。

F1のオフィシャルビデオは埋め込みができないので、レースハイライトのリンクだけ貼っておく。
アブダビGPレースハイライト(外部サイト)

AbuDhabi2022-2.jpg私は「ルイスはチャンピオンを奪われた」と思っている。
アブダビGP最終ラップにおけるマイケル・マシの判断は間違いだったと言い切れる。
もし、彼が言うよに「レースをさせたかった」のであれば、一旦赤旗を出して再スタートさせるべきだったと思う。
その結果、マックスがルイスを抜いてチャンピオンになったのであれば文句はない。

この件については、いろんな人がいろんな意見を言っている。
"シーズン中にはルイスに有利な判断が下されたこともあったじゃないか" とか "もっとも勝利を挙げたのはマックスじゃないか" とか…。
前者については後出しジャンケンのような言い訳なので問題外。
後者については、F1のポイントシステム上なし。
あくまでも獲得ポイントが多いドライバーがチャンピオンと決まっている。
ちなみに、1982年は優勝者が11名出て、2勝をあげたドライバーは4人いたけど、最終的にチャンピオンになったのは、1勝しかできなかったケケ・ロズベルグ。
私は、この勝利はものすごく価値のあるものだと思っている。

AbuDhabi2022-3.jpgこの写真は、レース後にマックス・フェルスタッペンを祝福するルイス。
納得できていないにも関わらず、一人のスポーツマンとして振る舞ったルイスに感動した。
昔「子供ドライバー」などと言ってしまったけど、ごめんなさい。
今は、あなたの事が大好きです。

(その後)
ルイスは、FIAの表彰式を欠席し、全てのメディア/SNSから姿を消した。
そして、2022年最初のテストであるバルセロナで久しぶりに姿を現し一言。
「去年の僕がベストだと思っているなら今年を見てほしい」